僕の設計は完璧だったハズ。 いや、ハズじゃない完璧だ。何度も何度もミスは無いかと計算したんだ。 もう一度、設計図を見返した。 やはり間違いがあるようには思えない。 なのに何故、起動しないんだろう。 目の前の寝台に横たわる機械人間。 それは僕の造ったメカニカル・ゴーレムだ。 しかし機動させたにもかかわらず、一向に目を覚ます気配も無い。 目を伏せたまま微動だにしない。 …そうだ!もしかするとタイムラグが出ているのかもしれないな。 少し様子を見て… 「良いメカニカル・ゴーレムだ。気に入ったよ」 背後から声がした。 師匠はもう寝ているだろうし、師匠の声ではなかった。 こんな深夜に客が来るなんて聞いてはいない。そもそもここは僕のラボだ。 もっと若くて、低く響く声。 僕はゆっくりと振り返った。 さっき僕が机に置いた設計図を、一人の男が見ていた。 黒のコートに黒の帽子とグローブ、顔も包帯みたいな黒い布で覆っている。 バサバサとした灰がかった赤毛以外は、全身真っ黒の男だった。 不気味な奴…どう見ても怪しすぎる。 僕は寝台を背に、男を無言で睨み付けた。 僕が警戒しているのに気付いたのか、男はこちらを向いた。 「君の設計は確かに上手く出来ている。申し分ない出来だ。 足りないのは…ふむ、そうだね。キッカケかな。 私が あげようか」 男が指を鳴らした。 パチンッという音と同時に部屋が緑の光包まれて、僕は目が眩んだ。 微量の電流のようなものが身体を駆け抜ける。 もしかして魔法!? この男「魔術師」なのか? 「勝手に入ってすまなかった。また会おう」 男の声が聞こえた。 僕はまだ目が眩んでいて、その姿は見えなかった。 また?また来る気なのか。 目が慣れて見えてくるともう僕の部屋に、男はいなかった。 窓が空いていた。ここから出ていったようだ。 …今度入り込もうとしたら、警察に通報してやる。 しかし、一体何だったんだろう。 あまりに突然すぎて、まるで夢でも見ていたようだった。 …あれ、そういえば僕…今、何をして。 あぁ、そうだ。メカニカルゴーレムの様子を見ようと。 クイッ。 「え?」 ふいに、服のすそを引っ張られた。 裸の幼い少女が僕の服を摘んでいる。 その身体にはいくつものコードやチューブが繋がったままだ。 メンテナンス用の寝台に足を投げ出して座り、キョトンとした顔でこちらを見ている。 虹色に輝くその瞳で僕の顔を見つめ、少女はとびきりの笑顔を見せた。 開口一番、少女は言った。 『とと…さま!』 少女の名は「ナユタ」 僕のメカニカルゴーレム。 歴代のナユタの名を継ぐ、新たなメカニカルゴーレムの誕生。 そして、それは僕。 オルト・"ミランダ"・ホーエンの誕生でもあった。 . . . . . . . . . . . . あれ…「ととさま」って…僕の事?(汗) 2008/04/19 |