■AAA『機動、そして全てのはじまり』■



僕の設計は完璧だったハズ。
いや、ハズじゃない完璧だ。何度も何度もミスは無いかと計算したんだ。
もう一度、設計図を見返した。
やはり間違いがあるようには思えない。

なのに何故、起動しないんだろう。
目の前の寝台に横たわる機械人間。
それは僕の造ったメカニカル・ゴーレムだ。
しかし機動させたにもかかわらず、一向に目を覚ます気配も無い。
目を伏せたまま微動だにしない。

…そうだ!もしかするとタイムラグが出ているのかもしれないな。
少し様子を見て…

「良いメカニカル・ゴーレムだ。気に入ったよ」



背後から声がした。
師匠はもう寝ているだろうし、師匠の声ではなかった。
こんな深夜に客が来るなんて聞いてはいない。そもそもここは僕のラボだ。
もっと若くて、低く響く声。
僕はゆっくりと振り返った。
さっき僕が机に置いた設計図を、一人の男が見ていた。
黒のコートに黒の帽子とグローブ、顔も包帯みたいな黒い布で覆っている。
バサバサとした灰がかった赤毛以外は、全身真っ黒の男だった。
不気味な奴…どう見ても怪しすぎる。
僕は寝台を背に、男を無言で睨み付けた。
僕が警戒しているのに気付いたのか、男はこちらを向いた。

「君の設計は確かに上手く出来ている。申し分ない出来だ。
 足りないのは…ふむ、そうだね。キッカケかな。

 私が あげようか」

男が指を鳴らした。
パチンッという音と同時に部屋が緑の光包まれて、僕は目が眩んだ。
微量の電流のようなものが身体を駆け抜ける。
もしかして魔法!?
この男「魔術師」なのか?

「勝手に入ってすまなかった。また会おう」

男の声が聞こえた。
僕はまだ目が眩んでいて、その姿は見えなかった。
また?また来る気なのか。
目が慣れて見えてくるともう僕の部屋に、男はいなかった。
窓が空いていた。ここから出ていったようだ。

…今度入り込もうとしたら、警察に通報してやる。

しかし、一体何だったんだろう。
あまりに突然すぎて、まるで夢でも見ていたようだった。
…あれ、そういえば僕…今、何をして。
あぁ、そうだ。メカニカルゴーレムの様子を見ようと。


クイッ。


「え?」
ふいに、服のすそを引っ張られた。



裸の幼い少女が僕の服を摘んでいる。
その身体にはいくつものコードやチューブが繋がったままだ。
メンテナンス用の寝台に足を投げ出して座り、キョトンとした顔でこちらを見ている。
虹色に輝くその瞳で僕の顔を見つめ、少女はとびきりの笑顔を見せた。
開口一番、少女は言った。

『とと…さま!』
少女の名は「ナユタ」
僕のメカニカルゴーレム。
歴代のナユタの名を継ぐ、新たなメカニカルゴーレムの誕生。

そして、それは僕。
オルト・"ミランダ"・ホーエンの誕生でもあった。
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あれ…「ととさま」って…僕の事?(汗)


2008/04/19




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