プロローグ


暗い空が広がる。
霧に包まれ全てが黒に包まれていた様だった。

日本瀬戸内海沿岸。
佐渡
『日本シリーズ第一戦。今年はパ・リーグか、・・それとも昨年に続いて・・・。』
ラジオを聞いていた漁師が少し疑問を持った。
ラジオがうまく音がでない。
「あれ?」
ラジオを何回か叩く。
その時揺れた。
「あん?」

突如として空が裂けた。
黒の柱が開いた。
地面が揺れ、大気が震える。


モニターには異常なほどのエネルギー反応を示した。
それを見て研究者たちは驚愕する。
「体感震度は2。しかし全ての観測計が震度自体8を示しています。」
様々な計器は膨大なエネルギーを示している。
本来なら震度8を示すものは阪神大震災、いや、それ異常を匹敵する規模の激震級である。
科学者の一人が計器を見て呟く。
「ありえませんよ。こんな事、あるはず・・・無いんです!」


黒の柱は恐ろしくそして哀しげに海にそびえ立つ。


同時刻
韓国、及び中国。
様々に人々がその柱を見た。
好奇心を持つもの。 恐怖するもの。
それは様々だった。



早河マリーは黒の柱を望遠鏡などで記録している。
その時だ、夫の丈が来た。
「マリー!身重なのに無理しちゃ・・・!」
「歴史上初めての現象ですよ・・・丈。」
「それは分かるけど・・・。」
「観測記録を急いで・・・。」
「あ、ああ・・・。」


その時だ。
柱が光を放ち鼓動した。

柱から、何かが出てくる。
突如何かが突起物が生えた。 二つも。
その先端からもまた光を放ち形を成す。


一つは漆黒の翼を持った竜。
しかしそれは生物とは思えない生物だった。

それはまさに『モンスター』(怪物)

頭に銃、いや銃そのものが頭部を形成していた。
暗色系の赤の色の体には紅い瞳が四つあり、顔がある。
漆黒の羽には無機質にも風車がある。
尾は二股である。

そしてもう一つはまさに闇だった。
夜の空や柱の黒とは別の『暗闇』(喰闇)だった。
先程の竜のような姿。しかし違う。
同じように翼があるが。しかし違う。
翼は体の色と同じであるがその羽一つ一つ銀の文様が浮かんでいた。
体も顔は無く銀の文様が様々に浮かび上がっている。
顔はもう一体と同じ中は無く、まさに竜の頭だった。
その瞳は一つが血の様に紅くもう一つが純粋な青の瞳をしていた。
そして尾。
その尾は二股に分かれている。しかし決定的に違う。
その長さは自らが体長さえも2倍は超えるほどの長さだったのだ。
あくまで細く、美しいその尾はしなやかに空を舞っていた。

 咆哮
 2体のモンスター(怪物)の咆哮


空からは戦闘機が。
海からは戦艦が。
その2体のモンスターを包囲した。
サーチライトが辺りを明るくし。
2体のモンスターを照らした。

 また2体のモンスター(怪物)は咆えた。

自衛隊が攻撃を開始した。
空と海から。
攻撃を開始した。

空中からの戦闘機からはミサイル攻撃。
それをギリギリまで近づき撃ち放つ。

それに気づいた闇のモンスターが顔を向ける。

それが合図かのように瀬戸内海は激戦となった。

海上の戦艦からミサイルが満遍なく降り注がれる。

空にあるヘリの一つが闇に貫かれる。
海上の一つの戦艦がなぎ払われる。

海上の艦隊は赤黒の風車のモンスターの閃光によってなぎ払われ。
空中の飛行機は闇のモンスターの尾によって貫かれていった。


 咆哮する。
 2体のモンスター(怪物)は。


その時だ。
2体が何かに気づいた。
赤黒の風車のモンスターが横を向く。

天と海を結ぶ黒の柱から『また』何かがでてきた。
いや、呼び出した。


二つの黒の突起物からは淡い白の光が放たれる。

赤黒の風車のモンスターはそれに向かって唸りを上げた。
闇のモンスターはそれを待っていたかのように自らの手を、指を動かす。

現れたものは白い剣が頭その物であり、虫のような6本の足。
蛇のような白い体だった。背中には薄い硬質の羽の様な物も見られる。

もう一つは闇のモンスターと同じ姿形をしていた。
ただ違うのはその姿の体色と尾だった。
光。
まさに言うならば先程出てきた2体のモンスターから言えば対立するもの。
同じであって、同じではないもの。
淡く白の光を背負う竜の翼は金色の文様が浮かび上がっている。
尾は闇のモンスターほどではないが長く、そしてこちらは一つだった。


モンスターたちは何かを待っていたように止まった。
赤黒の風車のモンスターは白き蛇のモンスターを見つめ。
白の光を背負う竜は黒の闇を纏う竜を見つめた。

 それほどこの存在が憎いから。

 消さなければこの感情が止まらないから。


白の蛇が動いた。
後ろにあった硬質の羽が強大化、広がり頭の前辺りでひし形表面を作る。
そして白の光背負う竜の動く。
手のひらから現れる一条の光が白の光背負う竜の胴体の前に現れた。

黒き竜達も動く。
銃の頭を持つ赤黒の竜は辺りの『黒き風』を吸い込んでその銃に溜めていった。
闇の竜は二股の尾が長く伸び、先端が鋭くなり、闇を纏い始めていた。

4体は同時に動いた。

白の蛇は赤黒の竜に白き光を放ち。
赤黒の竜は白の蛇に黒き光を放ち。
 二つの光りは交差し、相手を貫く。
黒き光は白の蛇を貫き。
白き光は赤黒の竜を貫く。

白き光と金の文様を背負う竜は黒き闇と銀の文様を纏う竜にその手にある一条の光を撃ち放った。
黒き闇と銀の文様を纏う竜は白き光と金の文様を背負う竜に自らが二つの尾で貫いた。
 二つは重なり白の光は一つの闇によって軌道が逸れ、もう一つの闇が貫いた。
自らが一つの尾を犠牲に、自らを貫く『閃光』を逸らし、もう一つの尾によって貫いた。
 白き光と金の文様を背負う竜を。


赤黒の竜が。
白き蛇が。
白き光と金の文様を背負う竜が。

 黒の闇に。
 白の光に。
 金と白の閃光に。

 飲み込まれ消えた。


残ったのは闇の竜だけ。


そのときだ。
闇の竜が一声鳴いた(泣いた)。
そして。
自らが闇纏う残った尾で。
自らを貫いた。
そして、また一声泣いた(鳴いた)。

そして。

黒き闇と銀の文様を纏う竜が。

 銀と黒の暗闇に。

 飲み込まれ消えた。



黒の柱は大きく膨れ上がり。
飲み尽くしていった。


モンスター(怪物)達の戦いを全て見ていた早川夫妻と共に。


そして、その戦いを高みで見ていた者がいた事は誰一人として知らない。






「異界の夜へ、ようこそ。」
淡く広がる空を移した球体を手に、ローブを纏った銀の髪持つ女性が語る。
彼女は。
「私はファーブラ。『導く者』。
 『界列の日』。
 そう、あの『混沌なる闇の柱』が現れた日から12年の時が流れ、今また新たなる旅立ちが。
 新たな瞑想(迷走)が、始まろうとしています。」

その場所は真珠と珊瑚、貝殻などが飾り散りばめられた空間。
そしてそこは一つの貝の中だった。
彼女の言葉が続く。


 ああ、そこはまさしく。

 異界





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