迷い人たちの出会った男。 彼は破壊者。 そして迷い人たちはまた出会うでしょう。 追い求める者に。 『目覚め〜しずかなるまくあけ〜』 黒き風は魔銃を前のまた地に戻し、その場を立ち去る。 そして、暗闇の彼の後を追う。 黒き風を追って。 「くぃ?」 何故彼女は彼を追うのだろう? そう考えた。思った。 彼女は何を考えているかわからない。 でも。 それでもいい。 当たり前だ。他人の事などわかるわけがない。 わからない事ばかりだけど。それでよい。 居場所になってくれるから。 クリスタルを落とし、モンスターを出現させた飛空挺は、 急ぎある場所に向かっていた。 灰色の空に浮かぶ、巨大な建築物。 異界の唯一の支配者が住む要塞。 その名は、ガウディウムという。 左右にある無数の尖塔の一つに、二人の男女がいた。 どちらとも年は20代ごろだろう。細身の為か少し小柄の印象を受ける。 青年の方は刺の様な黒い飾りが浮き立つ、白い髪。 女性の方は頭の後ろに黒い飾りが下に向けて立っている。 身にまとう衣装は二人とも同じで、長靴、マントのいたるまで白。 腰に巻いたベルトに数本の小ビンが刺さっている。 女性は仰向けに寝転んでいて、片手に本を持って開いている。 青年は女性にうつ伏せに抱きついたように眠っている。 ふと、女性が目をちらりと本から外した。 キノコ型の飛空挺がガウディウムの中に入っていく。 それを見ながら彼女は片手で開いた本を口もとに寄せて隠した。 「たとえば」 広い空間に、子供の高い声が響いた。 謁見の間とも呼ぶべき場所に、豪華な御座に座っている少年が、 フォークで皿を叩いている。 「付け合せにシルキス」 フォークで刺して、上に掲げる。 「これを添えるほど調和の取れるものは無いわけで、・・・ これがギザールだったら全然合わない。肉の旨みを殺しちゃうんだ。 調和を乱すものなんだよ。僕の調和。僕の秩序・・・」 ムシャりと音をたててかみつく。 「なのに・・・」 皿に登って、異界虫の目が開く。 それから見られる映像。 魔銃を構え、引き金を引く風。 神鞭を振り下ろし、強硬度の槍に変える暗闇。 先程まで静かだった口調が突如激昂した。 「僕を討った!僕を討った!!僕を討った!!!」 怒りが激しく現れ、テーブルの上の食事や皿などが床にぶちまけられる。 そのなか、伯爵の御座にふわりとピンクの花びらを象った服を着た女性が降りてきた。 緑の肌を持つ、化粧の濃い、きつい顔立ちの女だ。 「伯爵様ったら、お可愛いことを」 媚びの含んだ甘ったるい声を出して、伯爵の腕に自分の腕を絡めた。 「閣下のお許しがいただければ、某、即刻に対処いたしますが?」 カーキ色の軍服に身をまとう男が敬礼して、言った。 「消して・・・!」 怒りを隠せずに、伯爵は命じた。 「承知!」 それが合図可のように、パイプが鳴り、胞子の煙が噴出す。 「て、言うか〜。その場で捻り潰してこないなんてフングスちゃんも臆病者ね〜」 からかう様な声で女はパラソルを回す。 「なんだとヘルバ!」 売り言葉に受けて、怒りを隠せないフングスは叫ぶ。 「某は閣下に一刻も早くお知らせする為にやむなく戻っただけだ!!」 「やーねぇ。プープー、かび臭いんだからぁ・・・。」 その言葉と同時に伯爵は椅子に持たれかかった。 「僕の世界で・・・。この調和の取れた異界で勝手な事をする奴らは許さない・・ ・」 伯爵は不意に横を見る。 「そうだろう?オスカー?」 先程まで居なかったと思った場所には仮面を付けた人物が立っていた。 フングスはそれに驚く。 「勿論で御座います。ご安心を・・・」 「あら?オスカーちゃん、居たの」 ヘルバは差ほど驚かずに声を出す。 「私の作りました人形、「クルクス」が追尾を続けております。 獲物は何処へ隠れようとも逃しはしません」 最後の言葉あたりは重い口調のような、楽しんだ口調の声が出てきた。 「オスカー、気が利くね」 先程より、怒りが収まったのか軽い口調がこぼれる。 「勿体無い御言葉で御座います・・・。フングス様。 外界からの侵入者の始末、御任せ致しますよ」 オスカーは重い口調でフングスに話す。 「そうだね、フングス頼むよ」 伯爵は気楽な声で命令する。 「ハッ!お任せを!!」 フングスはお辞儀をする。 楽しみのような口調で。 木によって作られた建物の合間を行く一人の男性がいた。 黒き風だ。 そして、その後ろに二つの影がいる。 暗闇の満月と、黒チョコボのクイだ。 「何故此処にいる?姉さん・・・。」 いきなりの風の言葉にクイは驚く。 暗闇と彼が姉弟とは思っていなかったから。 確かに、似ている所は似ている。 黒い服に黒い髪。風のほうは少し赤みがあるが大体似ている。 そして瞳の色。 同じ淡い蒼の瞳だ。 「お前を見つけたから、此処にいる。・・・お前は探しているのか?」 その言葉で風は空を向いた。 「白い・・・雲。・・・忘れない・・・。」 重みのある口調で声は出された。 思い出すのは。 砕ける大地。飲み込まれる世界。崩れる螺旋。 そして闇に消えた。 風は暗闇に振り返る。 「何処だ?」 歩いていく、クイは二人の後ろに。 そこでクイは気づいた。 空からまた何か来たと。 闇と風も空を見る。 あの時クリスタルを落とした飛行船だ。 巨木の森に向かっている。 そこに落ちたのはクリスタル。 また同じキノコ。 でも種類は違う。仲間を増やしていく。 そこには列車で見た人々がいた。 女性はリサと言うらしい。 リサは一撃で相手を押し倒す。 でも、無防備な子供たちが守れない。 それの一瞬の隙でキノコの一つに捕われてしまう。 「アイ!ユウ!」 子供たちの名前を呼ぶ。子供たちは目をつぶる。 そのときだ。少年の手に持っている羽が輝いたのは。 「クェェ〜!!!」 子チョコボのキックが炸裂し、キノコの一つが地に倒れる。 「「チョコボ!」」 子供たちが(助けてくれた!)と言う顔をしてる。 しかし。 「クェ」 と一声鳴き、そのまま180度ターンし、逃げた。 子供たちの顔がもの凄い顔をしてる。 クイはそう思った。 そしてまた、子供たちはキノコに囲まれてしまった。 「アイ!!ユウ!!」 リサがなんとか脱出しようとするが出来ない。 そのときだ。 銃声。 風が左足にある赤い銃でキノコたちを撃ったのだ。 リサや子供たちは呆然とした顔で撃たれていくキノコを見ていた。 そんななか風が3人に声をかける。 「おい」 澄んだ声だ。クイは一瞬そう思った。 3人は自分達の後ろに風がいると言う事を気づかなかったのだろう。 そして、自分と暗闇がいる事を。 「風・・・」 少年・・・、ユウが風の名を言う。 少女・・・、アイは暗闇を見ている。 そしてリサは二人と自分を警戒していた。 「お前たちに聞きたい事がある」 風が口を開いた。 「う、うん、・・・でも」 少年は風の問いかけに答えるがそのとき。 「ああ!また来た〜!」 アイは声を出し自分達の後ろにいるキノコたちを見る。 それを反射的に暗闇が鞭で、風が銃で撃退する。 風の銃でキノコが粉砕し、暗闇の鞭でキノコが引き裂かれる。 何体か倒した後。 本体らしいキノコがいた。 このキノコが仲間を増やしていたようだ。 風が赤い銃を乱射し、暗闇の鞭がきのこの腹を貫いた。 そうしている内にキノコは縮み、ただのそこら辺にある普通のキノコになった。 ピー! 「現れたな、黒き風の男、暗闇の満月よ」 木の上に現れた謎の男。 風は一瞬止まり、銃を乱射する。 当たっている。 が。 全てその男の口で止められてしまった。 「フフフン」 「人じゃない・・・」 リサが男を見ながら呟く。 弾丸を口で噛み砕き、それを固め吐き捨てる。 「某はガウディウム四凱将が一人、フングス。 タイラント伯爵の命により、貴様らを殺す!」 最後にピーとパイプから音が鳴る。 そのときだ。 彼女から何かが現れたのは。 風と自分は気づいたようだが、他の人物たちは気が付かない。 ・・・彼女が一瞬哀しい顔をして言った。 「目覚めた・・・」 さして、それが合図かのようにリサが気づいた。 「下がって!」 「「えっ?」」 子供たちは何が何だか分からぬ様だ。 「ソイル、我が源!」 その言葉が合図かのように腰の後ろにある鞭が振るえ、 彼女の手の中で脈を打った。 そして神鞭がいきなり伸びた。 空中に輪を描く。 輪を描いた神鞭はなぜか水面があるように向こう側がぼやけて見える。 始めて見る。 クイはそう思った。 「神鞭、開放」 その言葉が始まりだったかのように動いた。 「面白いそなたもそのような力が使えたかのか、いいだろう。 某をその神鞭とやらで倒してみるが良い!」 彼女は腰のベルトから何かを取り出す。 「お前に相応しいソイルは決まった・・・!」 風とは違う、圧倒的な何かが感じられる。 ガラス球? クイと、リサはそう思った。 「大空を超える無限、スカイブルー」 それは青いガラス球。 それを空に放り投げ砕く。青い粉が神鞭の輪に吸い込まれる。 そして次に取り出したのは茶色の球。 「大地を貫く完全、グランドブラウン」 彼女はそれを手でいともあっさりと砕く。 脆くそれを砕く。 最後に取り出したのは淡い紫の球。 「そして、次元を抉り出すまやかし、マジックヴァイオレット」 淡い紫の球は彼女の目の前で砕ける。 右手で神鞭をかざす。 そして神鞭の輪の中では3色の色が混ざり合い始めた。 「出でよ!召喚、テュポーン!」 神鞭の『扉』から3色の色が飛び出し、フングスに向かった。 「効かんな〜、そんなのではとうてい勝てん?」 な。と言おうとしたのだろう・・・。 フングスの目の前には小さな物体が現れた。 それが動き、何かが起こった。 箱に包まれた。 いや、正確に言うと箱の様なものに空間ごと切り取られ、 入れられたと言った方が早いだろう。 「貴様、何をした!」 くぐもった声で空間を押しつぶされフングスは暗闇に問うた。 「テュポーンは風と共にあり、空間と共に消滅するべき召喚獣だ」 暗闇の代わりに風が答える。 そしてうめき声を出しながら、フングスは空間と共に圧縮され、空間と共に砕けた。 それを見ていた者たちがいた・・・。 青とピンクの人形。 クルルとクルクスだ。 「クルッル・・・」 「クックルユー・・・」 「白い雲を知らないかって?」 「ごめんね・・・、僕たちもこの世界の事良く分からなくて・・・」 「悪いけど・・・」 これら三人はそれぞれと言葉を出した。 「あの、お姉さん、おじさんと友達?」 アイは暗闇に聞いてみた。 だって風と同じソイルを使って召喚獣を呼び寄せたのだから。 「姉だ」 ぼそりと小さな声で放つ。 「え!お姉さん!?おじさんの!?」 ビミョ〜という感じな顔で暗闇と風を見比べる。 そんななかユウが風に話し掛けた。 「人を探しているなら。一緒に・・・」 最後まで聞かず風は後ろを向く。 「あ、ありがとう、助けてくれて・・・」 リサは感謝の声を出そうとしたようだが、警戒の気持ちなど複雑な感情を持ってい る。 そのまま、彼は歩き出す。声の一言も出さずに・・・。 暗闇も彼について行く。 もちろん自分も。 「クィックゥ〜」 さよならと言って自分は急ぎ足でついて行く。 そんななかアイがこんな言葉を出した。 「サンキュ〜」 ありがとうと言ったのだろう・・・。 彼らが去った後。 ユウはチョコボの羽を自分の頭に飾りとして刺していた。 「似合う?」 「全然」 あっさりと言い放つアイ。 そんななかいきなり声が聞こえる。 「クエ〜!」 チョコボだ。 「チョコボ?」 「何かを教えようとしてるみたいだけど・・・。」 その言葉からでユウだけが違う言葉を出した。 「大変だ、地下鉄が行っちゃうって!早く乗らなきゃ!」 そして地下鉄駅内に走り出す。 「ちょっとユウ〜!何でそんな事分かるのよ〜!」 ファイナルファンタジー・アンリミテッド 予言します。 そこは出会いの場所。 果実〜あまいかおりのまち〜 次回もアンリミテッドな導きを・・・。 |