※風、雲、暗闇(風の姉)、閃光(雲の姉)が
 一緒に旅をしているという設定です。



異界の夜は今日。
迷い人たちの隠れた話を見ていく。

「異界の夜にようこそ。
 私はファーブラ、導く者。
 今、私は迷い人たちの隠れたお話を見ています。
 このお話は、
 「大きな事件」
 「巻きこまれた迷い人たち」
 「巨大な魔獣」
 その原因。
 それは・・・。」


『リイネ〜巨大生物の山〜』


蒼い空、澄み渡る綺麗な空だ・・・。
私たちは森の中にいる。
私たち?
ああ、私と風と雲と閃光、そしてクイの事だ。
付かず離れずに私たちは今旅をしている。
何故旅をしているからだって?
他にする事がないからだ。
そして、今私たちはある目的でこの森に来ている。
その目的とは・・・・。


始まりは街の宿屋で食事を取っていたときだった。
私と閃光が軽い朝食メニュー4人前をそれぞれ食べている時だった。
風と雲は眠いのか軽いあくびをしてたりする。
風たちの食事は軽いパンなどを食べている。
そのくらいで大丈夫かと言いたかったが止めておく。
そしてそれらを食べ終わるとき一人の少女が現れた。
見習い魔導師あたりの服を着ていて、どうやらこの街専属の魔導師のようだ。
「あの〜、貴方たち・・・。旅のお方ですか〜・・・。」
「そうだが・・・。」
雲が素っ気無さそうに答える。
私たちもその事は本当など出来にしない。
私と雲は紅茶、閃光と風はコーヒーを飲みながら彼女を見る。
「あの、私リイネって言うんです。この街の魔術師見習なんですけど〜・・・。」
口ごもるリイネ。
「私は暗闇、そして仲間の風、閃光、雲だ。」
「一体何のようだ。」
風が鋭い目でリイネを見る。
そして彼女は今私たちだけでなく、
この宿屋に食べている数十人あたりに聞こえる大声を出す。
「お願いです!逃げ出した魔導実験動物を捕まえてください!!!」

『ぶっはあぁぁぁ!!!!!!!』

宿屋の全員が今、口に含んでいた食事を噴き出した。
無論、私たちも。
・・・・・・ざわざわざわざわ・・・・・
こいつ、そーゆーヤバイ事大声で言うか?いきなり?
「な、そんな、また冗談を・・・。」
閃光が手をパタパタと上下に揺らしながら笑って誤魔化そうとする。
「冗談なんかじゃありません!」
頼む、そんな無茶苦茶でかい声を出すな!
皆様方がこっちを向いているではないか!
それにそれほどの事は本来秘密で
聞こえるか聞こえないあたりで言う物が筋だろうが!!
「このままじゃ森が荒野になっちゃうかも知れないんですよ!!」
「おい・・・。」
私が少し声をかけるが彼女はそんな事無視して言葉を言い続ける。
「このままだと事態はどんどん悪くなってしまうんです!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「街の人たちがパニックを起こすその前に何とかしない」

    ごんっ。

とりあえずその場は。
私の振り下ろしたいすの角が、無事に彼女を沈黙させたのだった。



「痛い〜、なにするんですか!!」
「なにするんですか、じゃないわよ!
 魔導実験動物の捕獲なんて普通小言で話すものよ!
 町の人間にパニックが広がるでしょうが!」
閃光が怒りながら彼女に怒鳴る。
今、私たちがいる部屋は私と風の泊まっている部屋、
隣の部屋には閃光と雲が泊まっている。
「あ、
 ダメじゃないですか貴方たち!!!」
「私たちのせいなのか!?」
そう突っ込むのは風と雲。
確かに論点がずれてるな、彼女は。
「私がさっき「まったく毎度毎度酔ってるんじゃない。」と
 大声で言いながらクイと
 一緒に連れてきたんだぞ。感謝しろ。」
「そんな私の印象が〜!!!なんてこと言うんですか!!」
「もともとはあんたの責任でしょうが!!
 いきなり魔導実験動物が逃げたなんていうな!
 私たちが迷惑だ!!!」
「それは発想の転換です!」

『それは発想の転換とは言わん!!!!』

私たち4人の声が部屋にはもった。


そんなわけで見逃すわけには出来ず、実験動物の捕獲を引き受けたのだ。
風と雲はすでに戦闘準備を完了としてあたりを見回している。
ちなみにクイは私たちの荷物持ちだ。
「まったく、俺たちがこんな事をしなければならないんだ・・・。」
「文句を言うな風。一応貰う物は貰うんだから良いだろう?」
そんな話をしているとき、私は何かの気配を感じた。
がさりっ・・・。
しげみのその部分が揺れ現れたのは・・・!
「あ〜ら、魔銃ちゃんたちにお姉さまじゃありませがっ!?」
がごしっ!
私たちの投げた石に直撃し、ばったり倒れ伏したのは、
予想どうり伯爵の四凱将の一人、実質怪奇の植物女、
喋るな踊るな息するな。存在自体が犯罪行為に近い奴、ヘルバだった。
「いた〜い・・・、いきなりなにするんのよ、こんなの反則ちゃんよ!」
あっという間に回復し、起き上がるヘルバ。
「あ〜。ごめんごめん、何か危ない動物かと思ってたんでね。」
「・・・・・・クイイ。クイ〜・・・?」
(今相手の姿確かめて小さく『よしっ』とか呟いてなかったっけ?)

がさささ・・・。

「ヘルバ!勝手に行動するなと言ったるふがごっ!!!」

ごめすっ。

こんどはフングス。
お前らどっから沸いて出た。
「何でこんなところにいるんだ?」
「あ〜、それは伯爵様がこの森で何か面白そうな物がいたから捕まえてきて。
 って言ったから来てたのよん。」
「ヘ〜〜〜・・・・。」
「うが〜ヘルバ!さっきあっちにいたぞ!!伯爵様の為に捕らえるぞ!」
あ〜、こいつもうるさい・・・。
って、まさか伯爵の面白い物って・・・!

がさり。

そして、それは一同の前に現れた。
それは――ちょっとしたドラゴンくらいの大きさはあっただろう。
人の背ほどの高さの木を、巨大な歯が、いともたやすく引きちぎる。
全身を覆う、かがやくような白い獣毛。
長大な二つの耳。
そして、血の色をした両の瞳――
――そう。
それは誰からどう見てもでっかいウサギさん以外何物でもなかった。

え〜と・・・。

こういう場合どうすれば・・・。


何か風と雲が白くなっているのは気のせいか?

あ、思い出した。
確か昔、風と雲ってこういうウサギとなんかがダメだっけ?
小さかった頃何十匹というほどの動物に襲われたせいで。
「・・・・・・・・・・・。」
「ええっと・・・。」
風と雲が助けを求めるような顔をしてこっちを振り向いた。
「確かリイネの情報では、逃げ出したラビット七十二号だっけ・・・?」
閃光は困った顔をして言い放つ。
まあ、確かにこんなサイズのウサギを野放しにしてれば
ここら辺の植物は全滅するだろうな・・・。
「ヘルバ!捕まえるぞ!!」
「分かってるわよん!」
ウサギの前に飛び出すヘルバとフングス。
しまった!
ためらっているうちにフングスたちが動いてしまった!
「風、雲!
 魔銃と魔剣でフングスを」

頼む、そんな情けない顔をするな。
こっちが哀れになってきた。

ためらったその時。
・・・・・・・ぴくっ。
ウサギの耳が小さく動く。
赤い瞳がこっちを向いて――


ずざざざざざざっ!!!

茂みを掻き分け、木を倒し、こちらに向かってダッシュして来たのであった!
『んぐわわわわわわわぁっ!?』
フングス達を無視して跳ね飛ばし、急速接近するウサギ。
慌てて逃げ出すわれら4人。
「なんか凶暴化してないか!恨まれる様なことしたか私たち!?」
「いや、たぶん風と雲を見てなんか気に入ったんじゃないか?」
走りながら私と閃光がそんな話をして、
『んなわけあるかああぁぁぁ!!!!』
絶叫を上げる風と雲。
「だけどあんなのに掴まってじゃれつかれたらひとたまりもないぞ!」
「だから逃げてるんだろうが!閃光!!」
「あ!そうか!」
そんな時目の前にある影が現れる。

「あ、みなさ・・・んきゃあアァァァァァ!!!!!」
私たちの依頼人、リイネだった。
「あ、あの子はラビット七十二号!皆さんどうして逃げるんですか〜!?」
「あんたも逃げてるじゃないか〜!」
「当たり前です!あの子に抱き着かれたらどうなると思ってるんですか!?
 だから逃げるんです〜!」
「いばって言うなああアァァァァァ!!!!」
「姉さん此処はお願いします〜!!」
「雲、そんな事言われてもこんな逃げている状態では・・・!」
確かに見た目がいかにも怪物怪物していれば、大技一発で吹っ飛ばす、
という事もわりとやりやすいのだが、こうもぷりてぃだったりすると、
さすがに多少のためらいが生まれる。
とはいえ、このまま走り続けるわけにはいかないし・・・。
「私がなんとかしてみますぅ〜!」
言って何らかの呪文を唱えるリイネ。
ってこの呪文は確か!?
「スリプル!!!」
「ちょっと待て!私たちもなんだか・・・眠く・・・。」

ぽかぽぉぉぉん!!!

強烈な睡魔にふらつきかけた一同を、その後ろから
突っ込んできた巨大ウサギは、ものみごとはね飛ばしてくれたのっだった。



「予言します。
 迷い人たちの眠りは浅いもの。
 それでも、その一瞬は深いもの。
 揺れ動く原因の真実。
 動き出す謎。
 『破壊者』と『最強の敵』たるの者達は
 獣たちと戯れる。
 次回。
 『陰謀〜動き出す者達〜』
 次回もアンリミテッドの導きを・・・。」





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