あの時に隠された真実・・・・。
獣の耳に戯れる者達・・・。
苦難する者達・・・。

「異界の夜へようこそ・・・。
 私はファーブラ『導く者』。
 今宵はあの時の真実を知る夜・・・。
 その真実・・・。」

『災難〜風と雲の涙〜』



「ミストの奏でる歌に抱かれて・・・眠るが良い!!!」
雲と閃光の攻撃によるコモディーンの襲撃。
それによって風と雲の対決は多大な被害を与えた。
そこまでは良かった・・・が。
「アァァァァァァァ!!!アブな〜い!!!!」
シドの悲鳴。
そして何かの赤い光に雲と風は身を包まれる。
そして風は地下水脈に落とされる。
その時、閃光と雲は気がついてなかったが、
暗闇は風を抱き同じように落とされていた。
クイはその二人に続いて落ちる。
閃光と雲はそれを見て姿を消した・・・。


簡単だった・・・。
雲はそう思いながらヘルバの飛行船に
姉である閃光と共に飛空要塞「ガディウム」に向かっていた。
「あらら、魔銃ちゃんは魔剣士ちゃんにもう倒されちゃったんですか〜。」
ヘルバの気楽な声は閃光に放たれた。
「ああ。すぐ終わってしまった・・・。」
「もう少し遊びたかったですわ、魔銃ちゃんと。」
そのような話をしながら「ガディウム」に帰っていった。
その時、雲は自分の体が熱い事に気がつかなかった。
この後の『大』騒動を起こることは誰も知らない。


「風、大丈夫かな・・・。」
ユウの声は地下水脈の中に広がる・・・。
「あの、銃の人ですか?
 ・・・たぶん大丈夫じゃないと思います・・・。」
「シド!何でそんなこと言うの!?」
アイは怒鳴る。
「いえ、ぼくは怪我をしたとかそういう問題じゃないんです・・・。」
『?』
「あの時、赤い光が彼らに当たったでしょう?」
「あ、あの時の・・・。」
思い出すのは雲が何かに貫かれる直前。
シドの悲鳴と共に赤い光が彼らを覆う。
その瞬間、リサは誰かが風を抱き寄せ、あの濃密度の霧の中に消えていった者を見た。
「ねえシド、それがどうかしたの?」
「はい、あの光はぼくの作った「カミュール」の光なんです。」
『カミュール?』
三人の声は同時にシドに問う。
その時、謎のクリスタルとフングスが降りてきたのだった。


・・・・・・ぜ・・・・・・
暗い世界にいる。何も見えない黒い世界。
その世界の中、前方は明るく、白い世界だった。
そこに、あいつはいた。
・・・・・・ぜ・・・・・・
『君はやはり・・・目覚めるべきではなかった・・・。』
声が嫌に自分の耳に響く。
剣を掲げ、その瞬間。

クェェェェェェ!!!!!

目が覚めた。
「目が覚めたか・・・、風。」
「・・・姉さん・・・。」
「クェ〜。」
そこには見たことのある姿があった。
自分と同じ青い瞳の女性。
黒い服など同じ。
ただ違うのは髪の色。
風の髪は濃い赤茶色だが、彼女の髪は漆黒だった。
「雲の攻撃を受けて、ここに流された。」
「・・・何故。」
「クイィ?」
「何故動かなかった・・・。」
視線は右手の魔銃に向いていた。
風は体が熱かった。
しかし、それは雲に受けた攻撃と思い無視した。
こちらもあとから起こる『大』騒動に気がつかない・・・。


フングスを「ビスマルク」によって撃退した事までは良かった。
それから狂い始めたのだが・・・。



朝、雲は自分の体に異常が起こったことに始めて気づいた。
まず最初に気づいたのは手。
やけに自分の爪が尖っていることに気づく。
後ろにも異変があった。
尻尾。
白い猫の尻尾が見えた。
それに太くて長い。
それが自分に付いていたのだ。
感覚がある。
そして、頭にもあった。
耳。
白くて三角形の猫の耳。
これも意識すると動いたりする。
この姿は・・・。
猫。
絶句した。
どうしてこんな物が付いているんだろう?
どうしてこの様な事態になったのだろう?
どうして自分の頭と後部に猫耳と尻尾が付いているんだ!?
いま、雲がいる場所は伯爵が用意した部屋の一つ。
用心棒として雇われ個室を貰った。
閃光は隣の部屋にいる。
朝起きて鏡に映った自分の姿を見たらこうだ。
手で触ると「モコモコ」と柔らかい感触がある。
尻尾も同じ感触がある。

ガチャ。
ドアの開く音。
「雲、いるか?」
「魔剣士様。お茶を一緒に飲みません・・・。」
か。と言おうとしたのだろう。
オスカー。
何を考えているかわからない人形使い。
そして姉の閃光。
雲はその時絶句した。
見られた。
オスカーは片手にお茶のポットとカップを持ちながら。
閃光は片手にクッキーの皿を持ちながら。
退いた。
「ま、待て、退くな!退かないで姉上!オスカー!!」


暗闇は絶句していた。
雲の攻撃を受けてどこぞの森の中で一晩明かしたのだ。
その一晩で。
風の何かが変わっていた。
頭には何か三角形の黒い犬の耳。
黒い尻尾。
手の爪が少し尖っている。
これはどう見ても・・・。
犬。
何が起こったのだろう?
とりあえず暗闇は・・・。



風を起こして食事を取る事に決めた。
「起きろ、風。」
「ウ・・・。」

その後風は雲のような反応をしたのだと・・・。

「何があったんだろうね。
 昨日はキノコ怪人を倒して、その前に雲に倒されて・・・。
 何が原因なんだろうね?」
暗闇は、後ろで暗くなっている風に声をかける。
黒い尻尾と耳も少し垂れている。
クイは心配そうに風の傍で小さく鳴いている。
「そんなに暗くなるな。暗くなったって仕方ないだろう・・・。
 ここから先、川があるからそこに行くぞ。」
風はその言葉を聞き、暗い空間と共に森の出口に向かう。
「クィィ〜。」
「さあな・・・。」
クイは心配そうに暗闇に声をかけ、暗闇はどうしようもなさそうに返事をした。

「起きたらそんな格好か・・・。
 私もわからん・・・オスカー、お前はどう思う?」
「可愛いですね〜。触ってみたくなりますよ。」
「そうだな、しかし相手が相手だから無理だろうな。」
「そこが残念な所です。」
オスカーと閃光が何らかの話をしている。
たぶん、と言うかこの『可愛い』等と言っているから、
たぶん雲のことを話しているのだろう・・・・。
「姉上・・・、何か話がずれている様な感じがするのだが・・・。」
「ああ、すまんすまん。
 さて、やっぱりあの地下組織の時だろうな〜。」
オスカーの入れた紅茶を一口。
「オスカー、この紅茶の隠し味は?」
「南地方で取れるオレンジを乾燥させ、一週間ほど寝かせた物であります。」
「この紅茶の素材は?」
「北高山の数日間の内にしか栽培できない「アスート」の葉を、
 一度ゆで乾燥させた物でございます。」 「完璧だね、オスカー。」
「感謝の極み。」
雲ぶち切れ5秒前。


風は何処に行ったんだろう・・・。
あいつはそれほど馬鹿という訳でもないから、たぶん川に落ちたくらいだと・・・。
「川下に行くぞ、クイ。」
「クィ!」


川に落ちた。
それから流されどこぞの池に来た。
どうしてこんなんばっかだろう・・・。
哀しい・・・。
と言うか何ゆえ犬耳?
そんな事を考えながら尻尾を見る。
毛の長い尻尾は水に濡れて重い。
尻尾の毛の水をとって歩き始める。
早く姉さんに会わなければと考えていたが、
タイミングの良い所にヘルバの飛行船が現れた。
その時風は、自分がなんか泣きそうな顔をしているのではないかと疑問を装った。


「あらあら魔銃ちゃんじゃ・・・ないの!?」
「風!?」
ヘルバとユウは一瞬目を疑った。
だって風が犬耳に犬の尻尾を付けてるんだもん。
「・・・るな。」
「へ?」
「見るな――――!!!!」
風は赤い銃を握り四方八方に弾丸を放つ。
ヘルバは大急ぎに空に逃げ、ユウは物陰に隠れる。
一番ヤバイのはリサとアイだが・・・。
と言うか気づいてない。
アイを助ける為にリサは完全に風を無視していたのだ。
気づいたのはアイが目を覚ました次の瞬間だった。

「雲、しっかりしろ。そんな事ぐらいで嘆くな。
 伯爵にはオスカーが言っておいてくれたんだ。」
「姉上、それは分かるのですが・・・。」
「何だ?」
「尻尾触りながら言うのは止めてください。」
「だって、やわらかくて気持ちが良いんだ。」


「あ〜、何してるんだあいつは。」
「クィ〜」
「分かっているよ、さて今回はあいつに頼むか。」
暗闇は神鞭を空中で輪にし、ベルトの一つから化粧道具を取り出した。


《お前たちに相応しいソイルは決まった!》
全員がこの声に気づいた。
「「暗闇のお姉様!?」」
アイとヘルバは声を放つ。
そして風もこの声に気づいた。
「姉さん!?」
《岩を食い千切る、シャークグレイ(鮫の灰色)》
暗闇は灰色のシャドウアイを塗る。
「「お姉様は何処〜!!」」
「お姉ちゃん何してるの!?」
「クックルユ〜!?」
《渇きを飲み干す、ウォーターブルー(水の青)》
「この気は・・・あの上よ!!」
リサは崖の上を指差す。
そこには暗闇が二つ目のソイルの化粧をしていた。
青いマニキュアだ。
それをすばやく右手の爪に塗る。
「「ああ!お美しい!」」
へルバとアイは何故か同時に声を出している。
《そして虚空をも噛み砕く、クラッシャーホワイト(砕く白)》
「何という気の流れ・・・、あの人はまるで・・・!」
「あのソイルの組み合わせは・・・。」
そして三つ目のソイルの化粧は白いマニキュア。
それを今度は左手の爪に塗る。
そして灰色に染まった目蓋と、青と白の爪が空中に輪を造る神鞭に向けられる。
《轟け、召喚獣。ビスマルク!!》
その声と同時にソイルの化粧は消え、
新鞭で作った輪の中には灰色と青と白が混ざり合う。
そして、鏡が割れるような音と同時に白い鯨の召喚獣が現れた。
暗闇とクイは召喚獣「ビスマルク」に飛び乗った。
そして瞬間に水柱が立ち上がる。
天に向かって・・・。
「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
無論、その場に居た敵であるヘルバの生み出した
ホオズキたちとヘルバはその水柱に飲み込まれた。
風についてはノーコメント(謎に?)
リサ達はそのあと何もなくなった砂漠に取り残されていた。


「風、怒るな怒るな。
 ああしないとお前止まらないと思ったんだ。」
また濡れた尻尾と耳を絞っている風は、つんとして砂漠に立っていた。
そのときだ。
ズズズ・・・。
地鳴りの音。
「クィィ〜!」
「たぶん「ビスマルク」の余波で地盤が崩れかけているのではないか?」
「だろうな・・・。」
そして、風がその言葉を言った次の瞬間。
自分達のいた地面が抜けた。
「地面が・・・!」風
「このままで・・・!」暗闇
「クエックゥゥ!!」クイ
そして3人は地の底に落ちていった。
その3分後、リサ達も同じ末路となる。

え、何か全然違う話になってるかって?
いーじゃん!!3日後にはもう治ってたって言うふうになってるんだ!
そのあとシドの発明の一つである
半獣改造マシーン「カミュール」の起動によって、起こされたのを知ったとき。
何故か雲と風は共同でそれを破壊したとかしないとか・・・。




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