広い、広い書斎。 分厚い本が、何百、何千と巨大な本棚に並ぶ。 本の他には、ただ机と椅子が1つずつあるのみ。 その机には、一人の翁が座っている。 白いローブを着ている、神秘的な翁。 瞳は鮮やかな群青で、まるで深海のようだ。 長い髪は白髪と金髪の中間ぐらいの、なんとも不思議な色。 同じように髭も長く、胸元まである。 しかし不思議と、小汚くは見えない。 彼は名を忘れた語り部。 命を導く者・・・ 彼は、彼方達にある物語を語ってくれるそうです――― ようこそ、私の書斎へ。 私は『語り部』、伝える者・・・ 君達は、『異界』という世界を、知っているかね? 知らない・・・そうか、それもそうだな。 もう・・・この事を知っているのは、私だけだからな。 そうだ! 今から君達に、その『異界』の物語を語ろう。 私が見届けた、悲しい少年とその仲間達のお話。 君達が二度とこんな悲しみを背負わぬよう 生命を導く、語り部として――― まずは、幻界『ヴィジョリア』について、話さなければならないな・・・ 全ての始まりは、ここから。 今から何百年も前に、滅びてしまった国だ。 さあ、準備は良いかね? |