「赤い・・・・・霧・・・・?」
影の顔が少し強張る。
思い出したくも無い、過去と関係のある人物だったからだ。
「そう!にいさま、さがしてもいないの・・・だからさがすのてつだって!!!」
靄靄の目が潤んできている・・・これは断るわけにはいかない。
女の武器は、涙である。

「わ・・・分かった。手を貸すとしよう。」
困った影が仕方なく承知すると、気絶していた雪が起きてきた。
もう少し力を強くしていたら、死んでたかもしれない。
「う・・・・う〜ん・・・・!!!?影!!?
 彼女に貞操を奪われても構わないのですか!?」
雪はまだ頭が可笑しい(!)らしい。

「・・・・雪、汝もう喋るな。少なくとも敵ではない、
 どうやら兄を探しているそうだ。
 我には人の手伝いをする権利もないのか?」
ビシッと影は、雪に言い放った。
「う・・・・わ、分かりましたよぉ・・・」
これ以上何か言われるのが怖いので、雪は反論せずに従った。
「ふたりとも、どうもありがとう!!!」
靄靄が、ぺコリとお辞儀をする。
どうやら悪い人(影を奪う奴)ではないと雪も分かったようで、
お辞儀をされて少し照れているようだ。
警戒を解いた後、すぐ仲良く出来るのが雪の良い所である。
・・・・なかなか警戒心を解くのは難しいが。

「何処か、心当たりのある場所は無いか?」
影が、靄靄に尋ねた。
確かに、この広い異界で人を探すには手掛かりが必要である。
「それが、ぜんぜんわからないの・・・・」
「そうか・・・」
影が頷いて空を見た。

すると、空に何か飛行物体が1つ。
キノコのような形をしていて、ゆっくりこちらに近付いてきている。

「あれは・・・・!!?」
嫌な予感がして、雪は魔刀を構える。
するとその飛行物体は、空から何か水晶のようなものを次々とこちらに落としてき た。
「敵か!!?」
落ちたそれは、一瞬のうちに姿を変えてキノコの姿をしたモンスターとなったではな いか!
次々と落ちてきた水晶はモンスターとなって、その数は30体ほどとなっていた。
モンスター達は影達を囲み、皆同時に襲いかかってきた!!

「!!ソイル、我がちか・・・」
影は右手の魔シン銃を解凍させようとした。が。
それを、雪と靄靄が止めた。
「私達が倒します。」
「アイアイとゆきにまかせて!!」
二人は言うと、それぞれ白と黒のミストをベルトから取り出した。
雪は魔刀を、靄靄は二股に分かれた魔剣を宙に浮かせて。
するとモンスター達がたじろいだ。
おそらく、生命の危機を感じたに違いない。

「汚れ無い白き睡蓮の花に抱かれて・・・眠りなさい!!」
「ミストがかなでるかいせんきょくにだかれて・・・ねむりなさい!!!」



二人のミストが、同時に魔刀と魔剣によって真っ二つに割られた。



「白蓮のセレナーデ!!!」
「こくえんのロンド!!!」

割れた雪のミストのボトルが光り輝き、
そこから中ぐらいの大きさの白い一刀獣が数匹踊り出た。
それと同時に靄靄のミストのボトルからは、
巨大な黒い二つの首を持つ双刀獣(そうとうじゅう)が現れた。
「!!!?」
白い一刀獣達は虚空に舞い上がり、一気にモンスター目掛けて急降下した!
一刀獣は一筋の光となり、モンスターの半数を貫いた!
次に巨大な黒い双刀獣はモンスター達の周りを旋回する。
すると、モンスター達は双刀獣が旋回した直後八つ裂きとなったではないか!
双刀獣は残りのモンスター全てを薙ぎ払った。

そして、役目を終えた一刀獣と双刀獣は消えてしまった。

「うお〜勝ちましたよ★」
「アイアイ、がんばったよ!!」
それぞれも武器をしまい、雪と靄靄は戻ってきた。
影は心の中で思った。
「(我は必要ないのでは・・・?)」








「う〜ん・・・・やっぱりアイアイ、にいさまひとりでさがすよ。」

少し考えた後、靄靄は影と雪に言った。
「何故だ?」
「どうしてですか?」
二人は不思議に思い、尋ねる。
「だってアイアイのにいさまだから、アイアイのちからでみつけなくちゃいけないし、
 おあついふたりのじゃましちゃいけないよ。」
「!!?な・・・!!!!?」
影はひどく赤面し焦っている。
対照的に雪は照れてはいるものの喜んでいるようである。
「じゃあ、ばいばい!!」
靄靄は手を振ると軽やかに走り去ってしまった。

「お兄さん、見つかると良いですねv」
「ああ。」
そして影と雪は再び山道を歩き続けた。



FIN




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