異界の夜へようこそ。
私はファーブラ。導く者。
クリスタルに封じ込められた少年。
少年が語る偽りの名は破壊の化け物。
でも破壊の力は優しき心で封じられる……


『制御(セーブ)―ぞうおのかんじょう―』


「あら?魔剣士ちゃん。その子は誰?」
目聡いヘルバが、雲の後ろにいる中性的な少年を見つけた。
「こんにちは……」
雲の後ろにいた少年は、素っ気無くヘルバに挨拶をした。
「まあv礼儀正しい子v」
挨拶されてうれしいのか、ヘルバは嬉しそうにニコニコ笑っていた。
「でも、僕は君が誰かなのかを聞きたいんだけどね」
後ろにいた伯爵は冷たい声で少年を射抜いた。
しかし、少年はそんな事で屈するはずもなく冷静な口調で伯爵の問いに答えようとし た。
「俺はΩ五大精神の一つ……制御(セーブ)」
「君はΩなの?」
「そうだ………」
「証拠は?」
伯爵の質問に答えるように、制御は空を飛び、右腕を上に上げた。
それと同時に爆発音が響き、紫色のクリスタルが壁を破壊して現れた。
クリスタルは制御の手に落ちると、そのままおとなしくなった。
「これじゃ駄目?」
制御は悪戯っぽく笑うと、伯爵の手にクリスタルを落とした。
「これはΩなの?」
「クリスタルだけどな」
「凄いね〜他のは呼び寄せられないの?」
「俺の力の範囲外の注文だ。俺の力はΩの力を制御するもの。
 呼び寄せるのは操作の力だ」
「じゃあ他にはどんな事が出来るの?」
「じゃあ見せてやるよ……」
制御は左腕を下に降ろし、そのまま薬指を上に勢いよく上げた。
またそれと同時に周りの音が一斉に途絶え、しばらくすると
ピストの浸かっていた水の一部が宙に浮かび、鎌を形作ると床に落ちた。
「俺の力は制御する事。その気になれば……命も封じる」
一瞬の静寂が場を包み、それは伯爵の笑い声で破られた。
「アハハハ!君は面白ね、おい魔剣士。こいつの名前はなんて言うんだい?」
雲が伯爵の質問に答える前に制御が口を開いた。
「俺に名など無い」
その答えに伯爵は顔をしかめて
「それじゃあ呼ぶ時に困るね……ねえ魔剣士。こいつは何処にいたんだい?」
「花の咲き乱れる森」
「そう……じゃあ君の名は華雲だね」
伯爵の言葉に一瞬制御はキョトンとなった。
「カウン?」
「そうだよ。花が咲く場所で魔剣士が見つけた。君にピッタリだろう?」
「アイツ…雲って言うのか?」
「そうだよ。それより!どうなの!?この名前気に食わないの?」
伯爵の問いに制御は意外な答えを返した。
「ううん……嬉しい」
「そう。これから僕の家来になるんだから名前くらいないとね」
「お前は俺らの誓いを知ってるのか?」
「僕はタイラント伯爵だ!それに誓いって?」
「俺達の誓い。それは名付け主に従い尽くす事」
「へえ〜そんな誓いがあるなら僕に忠誠心を見せてよ」
伯爵の言葉に従うように華雲は伯爵の元に行き、片膝をついて頭を下げると
「我、汝の付けし名と引き換えに汝に忠誠を誓い、
 我の命尽きるまで汝の命だけを聞き、汝の命のみを護る事を誓う。
 我が身は全て汝のために、我が命は全ての汝のために、燃やし尽くします」
「………その誓い。忘れないでよね」
「もちろん」
見開いた華雲の瞳に偽りは無く、その意思を曲げるつもりは無さそうだった。
「良い度胸だよね……」
伯爵はただ薄く笑いを浮かべるだけだった。


予言します。
五大精神の1人、操作(コントロール)。
舞を踊るは戦の時のみ。
美しく舞う姿は、見る者を魅了する。
その姿は神の如き。

操作(コントロール) ―うつくしきあやつりびと―
次回もアンリミテッドな導きを……




[PR]動画