異界の夜へようこそ。
私はファーブラ。導く者。
破壊する意思達全ての目覚めが異界に伝わる。
困惑する気持ち、楽しむ気持ち、憎む気持ち。
そして、煮え切らない思いを持つ者は…


『力(ゲート)―はかなきしょうねん―』


「リンス様ぁんv」
広く殺風景な部屋に、四季の声が響き渡る。
「何だ?」
リンスは面倒臭そうに四季に言葉を返した。
「あぁんvリンス様はつれないわねんv」
「ところで……伯爵の様子はどうだった?」
「特に異常はありませんわんv後、制御がいたわねん」
「お前達の仲間か?」
「そうですわんv後、核部も蘇ってたのんv」
「そうか………」
自分の知りたい情報だけを聞くと満足したのか、
リンスは眠りにつこうとしたが、それはある人物の声によって遮られた。
「リンス様」
「………永久(トワ)か……なんの用だ?」
何時の間にか姿を見せていた少年はリンスに少し厳しめの声を与えたが、
リンスはそ れを聞き流すようにしていた。
「我々の部品集めはいいのですか?」
「そうだったな……四季、永久。探して来い」
「御意」
言葉と同時に、四季と永久の姿は一瞬にして場から消えた。


永久の方はΩの氣を感じる場所に向けて飛んでいた。
しかし、空中から発見したある人影を見て、その表情は一気に曇った。
その人影はリサ達一行。
永久は、疾風の姿を見て小さく呟いた。
「彼方は……目覚めるべきではなかったのです…
 あのまま眠っていた方が…人の暖かさを知らずに済んだのに……」
その声はとても悲しみに溢れた声だった。
そして、その頃リサ達は………
「ねえ!まだ歩くのぉ〜?」
荒野を歩いている一行はもう3時間もずっと休まず歩いている。
アイの言葉ももっともだった。
「そうね……そろそろ休む?」
「そうだね」
「意義無し。俺も疲れた……」
全員一致と言う事で、一行は近くにあった岩陰に腰掛けて、少し休むことにした。
しばらくすると
「甘い匂いがする………」
「え?」
疾風の言葉で一同は、匂いを嗅いでみたが、何も匂わなかった。
しかし、チョビが何かを嗅ぎつけたのか、
一声鳴くと、そのままある方向に駆け出していった。
「こっちだって!」
ユウの声を合図に、一行はチョビの後を追い駆けた。
そして、一行の着いた所は果実がたくさん実った森。
「これ美味しい〜v」
「これも美味しいよっ!」
それぞれ、果実を一つずつ取り、口にして空腹を満たした。
だが、そんな休息の時さえも異界を旅する一行には許されないのだった……
ピシュッ
一筋の光が樹林の一つに当たり、
そのまま樹林は周りを巻き込んで爆発を引き起こした。
「!?」
一行は爆発の起きた方向を一斉に向いた。
そこに、樹林は無く、代わりに永久がその場所に立っていた。
永久は一行の方を向き
「僕はΩ五大精神の1人……力(ゲート)こと永久です……核部…死んでください! !」
最後の言葉と同時に、永久は疾風に向かって一筋の光線を放った。
しかし、その光線も疾風のシールドの前で消し飛んだ。
「お前もアイツらの仲間……?」
「制御はともかく、四季さんは僕の味方サイドにいます……
 彼方は目覚めてはいけない存在……
 あの辛さを彼方が味わう前に僕が今一度、彼方を眠らせます!!」
永久は持っていた剣で疾風に勢いよく斬り込んだが、
その前に立ちはだかったアイを見て動きを止めた。
「退いて下さい………」
「嫌よ!なんであんた達、疾風を倒そうとするの!?」
「ハヤテ…?核部には既に名前があるのですか?」
「私が付けたのよ!」
「そうですか……なら!」
永久はアイに剣先を向けて眼を見開いた。
「貴女は死んでください!!」
永久の言葉に反応して剣先は鋭くなり、アイめがけて剣先が伸びた。
ザシュッ!
鈍い音が響き、思わず眼を閉じた一行。
アイも眼を閉じていたが、いつまでもこない痛みに恐る恐る瞼を上げると………
「…は…疾風ぇ!!」
剣が突き刺さっていたのは、アイではなく疾風。
疾風は剣先がアイの方までいかないように手で押し止めて、
それでも押え切れなかった部分は疾風の腹部に刺さっていた。
鮮血がポタポタと地面に落ちて、染みを作っていた。
「なんで庇うんですか…………」
なんでまた…傷つくんですか……?
最後だけは聞こえないように心の中で呟き、剣を引き抜いた。
「ぐふっ……」
疾風の口からは紅い鮮血が筋のように流れ出た。
「疾風!」
アイは疾風の身体を抱くように持ち上げ、血を自分の服で拭いたが、
血は止まらずにどんどん出て来る。
「死んじゃ駄目っ!疾風ぇっ!!」
止め止め無く流れる血を見て
自分の無力さを感じたアイの目尻からはボロボロと涙が溢れていた。
「泣いちゃ………駄目…だ…よ……」
それを見た疾風は自分の指でアイの涙をふき取った。
「馬鹿ぁっ!今は私より疾風の方が大事でしょ!?」
「いいんだよ………俺はアイが無事なら…」
疾風は虚ろな眼でアイを見ると、少しだけニコリと微笑んだ。
「…っ!!」
アイの中からは悲しみが込み上げてきて、涙が止まらなかった。
見ていられなくなり、少しだけ視線をずらしたユウの前に黒装束の男が立っていた。
「風!」
ユウの声に反応して、その場にいた者達は一斉に風を見た。
「動いた………」
光が灯った魔銃を見て、風は小さく呟いた。
「ソイル、我が力!」
風は魔銃を解凍させるために魔銃を構えたが、永久はその隙を狙い風に剣を放った。
動き出した魔銃のせいで風は身動きが取れず、剣は直撃かと思われた。
リサ達は思わず眼を瞑った。
グサッ
聞こえたのは鈍い音。
リサ達は恐る恐る目を開けると、そこには予想もしてなかった状況が目の前にあっ た。
なんと、風に向かった剣先を疾風が自身の身体で受け止めていた。
もちろん傷口からは血が先程とは比にならないくらい流れ出ていた。
これには流石の風も驚いたのか、
解凍済みの魔銃を持ちながらも、いつもの無表情を崩していた。
「…何故……何故黒き風の男まで庇う!?」
「………から……」
「えっ?」
「……風も……俺の声を…聞いて……くれたから……」
途切れ途切れの言葉に永久の眉間にはますます皺がよった。
「嬉し…かったぁ……今まで……俺の声なんて…
 誰も…耳を傾けて…くれなかったから……」
それでも笑みを崩さない疾風に対して、永久は強く怒鳴りつけた。
「また…また貴方は同じ事を繰り返すんですか!?あの時と同じ事を繰り返すんです か!?」
その怒鳴り声を平然としながら疾風は笑みを崩さずに
「俺は……昔どんな事があったかなんて覚えてない……だから…分からない……」
「その二人が対立するようになったらどうするんですか?」
「……二人共傷つかないように……考えるよ………」
「甘ったれた事……言わないで下さい!」
剣の標準を疾風に合わせると、永久は剣を伸ばして疾風に直接攻撃しようとしたが
バンバンッ!
銃声と弾丸により、その剣先は止まった。
「……何故邪魔をする黒き風……」
永久は風をキツク睨んだが、風はそれを無視するように
「お前に相応しいソイルは決まった!」
言葉と同時に腰のベルトからソイルの入った容器を取り出した。
「燃え上がる赤き輝き、『ルビーレッド(赤の宝石)』!」
赤の弾丸は魔銃の三つのうち、一つの穴にはめ込む。
「守護と癒しの力、『ヒーリンググリーン(癒しの碧)』!」
次に取り出したのは碧の弾丸。
「そして、全てをうつしとる『ミラードシルバー(銀の鏡)』!」
そして最後にはめられたのは銀の弾丸。
「輝け!召喚獣…カーバンクル!」
風の言葉が終ると同時に、魔銃から三つの光の弾が撃ちだされた。
それは混ざり合うかのごとく、永久へと向かって行った。
対抗するが如く、永久は持っていた剣で衝撃波を起こしたが、
その前に光が混ざり合い、カーバンクルと呼ばれた召喚獣が姿を現し、
衝撃波を倍にして跳ね返した。
返された衝撃波を避けきれず、永久に衝撃波が直撃した。
その瞬間、大きな爆発が起こり、
リサは急いで氣現術を使ったが、それは疾風を守り切れなかった。
爆発はすぐに収まったが、荒野にはリサ達以外、誰もいなかった。
召喚獣も永久も……そして、風と疾風も。
「疾風……まさか爆発に巻き込まれたんじゃ……」
「そんなわけないでしょう!?」
不安そうに呟くユウの言葉を否定するように、アイは大声を出した。
しかし、彼女の目尻には涙が溜まっていた。
あの傷で何処かに消えてしまった疾風を心配しての事。
アイが誰よりも疾風を心配していた。
「アイ…疾風ならきっと大丈夫よ……」
リサがアイを宥めるように優しく言うが、それも逆効果だった。
「あんな……あんな傷でどっかいかないでよ!!傍に…傍にいるって行ったくせ に……」
アイはボロボロと涙を流しながら、その場に座り込んだ。
リサとユウはただ、それを見守るしか出来なかった……


予言します。
小さき村を守る乙女。
彼女は心。彼女は黒い巫女。
疾風の過去を全て知る貴方は何者?
そして真意はいったい……

心(マインド) ―くろしょうぞくのみこ―
次回もアンリミデットな導きを………





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