異界の夜へようこそ・・

私はファーブラ『導く者』

走り行く地下鉄の中

希望を失った男に生きる事の意味を説いた者

彼の持つ刀が放つ光は見る者を惑わせる・・・・・


『妖刀〜あくまのかがやき〜』


伯爵の前にはオメガの欠片が四つ

一つはヘルバが

手下のカーク五千本使って手に入れた物

一つはピストが

前回、魔剣士が手に入れたオメガの半分ほどの大きさ

残り二つは魔剣士が

前回と同様の大きさで、しかも今度は二つ!

「皆頑張ってオメガの欠片見つけてきたみたいだけど・・・・
 うん、やっぱり魔剣士が一番だね!!」

伯爵は大喜びでオメガを手にとって眺める

「あんなに大きいの二つも持って来るなんてすごいわねぇ〜」

「・・・く、デカさの次は数で勝負か・・・・」

ヘルバのお気楽さは相変わらず

ピストはすっかり魔剣士を目の敵にしている

そんな中、オスカーが奥の部屋から現れた

手には伯爵の食事らしき物を持っている

「伯爵様、お食事の用意が出来ました」

出された料理はシチューだった

「ポロフの実をすり潰したものにミメットの葉を加え
 隠し味にファイヤカクテルを数滴混ぜたものにございます。
 これは身体の保温効果を援助いたしますので、
 一口食べただけでも御身体はポカポカと暖かくなるでしょう。
 少々熱くなっておりますのでお気をつけ下さい」

長々と説明をするオスカーを無視しシチューを食べ始める伯爵

「熱っ!!」

少し熱かったのだろうか息をふうふうと吹掛け冷ましている

「お可哀そうに。伯爵様ぁ、私が冷ましてあげますわぁん♪」

そう言ってヘルバも伯爵と一緒にシチューを冷ます

シチューがやっと食べられるぐらいの温度になった頃

オスカーがまた喋り始めた

「ところで伯爵様、フングス様の事についてなのですが・・・・」

「いやぁねえオスカーちゃんたら、
 フングスちゃんなら魔銃ちゃんにやられちゃったでしょお?」

ヘルバのその言葉を聞き思い出したように ぽんっ と手を叩くオスカー

「ああ、そうでしたね。私、皆さんに伝えるのをすっかり忘れていました。
 皆さん、実はフングス様は生きておられたのですよ」

軽く言い放つオスカー

「えっ!?」

「今・・何と・・・!?」

「ですから、フングス様の生存を確認したのです。」

驚くヘルバとピストに対し普段どおり無口な雲

皆の反応を見てからオスカーは話を続ける

オスカーはクルクスからの報告をまるで自分が見てきたかのように事細かに伝えた

「良かったですねぇ伯爵様ぁ。これでまた五凱将に戻れますわよぉ♪」

スプーンを口に銜えたまま伯爵は言った

「ダメ!いくら生きてても風も倒せないしオメガも見つけられないんじゃただの役立 たずだもの。
 それなのに五凱将を名乗る事はこの僕が許さないよ!!
 まあ、オメガの欠片をいぃ〜っぱい持って来てくれれば考えない事も無いけどね」

それを聞いたヘルバとピストは苦笑した

「あらあら、可哀想なフングスちゃん♪ せっかく生き返ったのにねぇ・・・」

「・・・・つくづく、哀れな男ですなぁ・・・・」

そんな二人の微妙な表情を、雲はただ無言で見ていた・・・・・・





地下鉄が次に着いた場所は荒れた岩山

見渡す限りの岩・岩・岩。人がいる気配はまったく無い

道無き道をただ歩き続けるリサ達

「も〜、こんな所にお父さんとお母さんがいるわけないよ〜」

「でも、もしかしたらいるかもしれないよ。お姉ちゃん、早く行こうよ」

愚痴を言いながら歩くアイ

「クエッ」

一番先頭にいたチョビが引き返しアイの近くによって来た

「ほら、チョビも『頑張れ』って言ってるよ」

「どうせならシエルチョコボに変身して、
 私達を運んで行ってくれてもいいじゃない!」

パクッ!

突然アイの髪を銜えるチョビ

アイの顔がサーっと青ざめる

そして次の瞬間

チョビはアイを銜えたまま猛スピードで岩山を登り始めた!

「ウワアァアアァァアァアアアアァアアァァァーーーー!!!!!!!」

「お、お姉ちゃーん!!」

「アイ!」

前にいたリサをとてつもない速さで追い越していく

アイの絶叫と共に・・・



ユウ達がアイとチョビに追い着いたのは数分後の事だった

手頃な石に腰掛け休んでいるアイ、かなり疲れている様子だ

「お姉ちゃん大丈夫?」

「大丈夫じゃないわよぉ!まったく!」

心配するユウを怒鳴りつけるアイ

眼が少し涙ぐんでいる。かなりの恐怖を体験したようだ

「とにかく無事でよかったわ」

リサがその言葉を言ったすぐ後だった

 ズズズズ・・

地震?いや違う、何かが地中にいる!

「アイ、ユウ!ここは危険よ、すぐに離れ・・・」

リサは二人を非難させようとする

が、それはすでに自分達の足元にまで来ていた

地中から現れたもの、『バイキング』

それは地下水脈で襲ってきたあのモンスターとまったく同じモンスターだったのだ

唯一、違うところと言えば身体の色が茶色の事だけだろう

バイキングが飛び出してきた時の衝撃で中に吹き飛ばされたリサ達

地面に叩きつけられる前にリサが氣現術を使った

柔らかな風が吹き地面にはゆっくりと着地できた

だが、状況は何も変わってはいない

しかもあの男まで現れたのだ

「貴様ら、やっと見つけたぞ!!」

岩陰から姿を現した者は生きる意味を見出し、文字通り『復活』したフングスだ!

今までたまっていた分、パイプからは汽車の様に煙を噴き上げる

「また出たぁ〜。もぉ〜、しつこいぞー!」

フングスは空高くジャンプし、バイキングの頭に乗る

「この岩山は『陸用バイキング』生息地なのだ
 陸用バイキングは地下水脈で貴様らが見たバイキングより格段に強さが違うぞ!
 さあ、おとなしく某に捕まり黒き風を誘き出す為の餌にでもなってもらおうか!!」

「僕達が・・・・・風の餌?」

「ハアアァァーー」

戦闘態勢のリサが氣現術を放つ!

「そんなものなど、このフングスに効くかぁ!!」

ピィーっとパイプを鳴らし気合を入れるフングス

なんと氣現術の『氣』を弾いてしまった!

バイキングも無傷。もはや打つ手は無い

「観念するのだな!」

その時だった



一閃!

紫の光がバイキングの身体を通ったと思った瞬間

バイキングは真っ二つに切り裂かれてしまった

「バっバカな、ミスリル鉱石と同等の強度を誇る陸用バイキングの鎧がぁぁー!?」

フングスはバイキングと共にガケに落ちていってしまった

「(何、今の光は!? 何か・・・とても嫌な感じの氣がした・・・・)」

「やっつけちゃった・・・・」

「すごーい! やったねリサ、何なの今の技? 氣現術じゃなかったみたいだけど」

呆然とするユウ、リサが倒したと勘違いしはしゃぐアイ

「私じゃないわアイ・・・・ここに誰かいる!」

警戒しながら辺りを見回す

すると、ちょうどフングスがいた場所の後方、誰かが立っているのが見えた

日本の侍に良く似ている格好した隻眼の男。

男はガケの端に立ち、下を覗き込んでいた

まるで、落ちていったフングスを心配するような表情で・・・

「(まさかあの人が!・・でも、一体誰なの?気配がまるで感じられなかった)」

アイとユウもその男に気付いたらしい

悩むリサをよそに何も警戒せず無防備に近づいていく二人

「おじさんが助けてくれたんだね。ありがとう」

「またユウはそんな事言って!
 こういう時は嘘でも『お兄さん』って言う方が良いって、
 風のおじさんに会った時に言ったでしょ!?」

二人から見ると『おじさん』ぐらいの年齢に見えるのだろう

「僕はユウ、でこっちがお姉ちゃんのアイです。おじさんの名前は?」

ユウに名を訊かれ男はゆっくりと喋りだした

「拙者の名は『マサムネ』。

御主らの名『愛』と『優』でござるか?良い名でござるな」

突然アイが笑い出す

「変な喋り方〜!おもしろ〜い!!」

「お、お姉ちゃん・・・・・」

『拙者』、『ござる』、確かにおかしい喋り方

『マサムネ』という名前といい、どうも過去の日本を思い起こさせる男だ

「そ、そうでござるか?拙者の世界ではこれが普通でござったが・・・」

「助けて下さって、どうもありがとうございます。」

遅れてきてまずお礼を言う、リサといえばリサらしい

「ああ、御主がこの子らの母親でござるか」

「えぇっ!?」

何かとんでもない勘違いをしているらしい

「こんな異界で女子供・・・・とその黄色い鳥だけで旅をするなど
 非常に危険極まりない!
 御主が使ったあの不可思議な技、確かに強力なわざかもしれん。
 しかし、御主も人の親なら一番に自分の子供達の事を考えるべきでござろう?
 敵わぬと判った時点で『三十六計逃げるに如かず』!逃げる事もこれまた勇気でござ る
 しかも人の命が掛かっているならなおさらの事・・・・・・」

「あのー違うんですけどー・・・」

こちらが止めなければいつまでも喋ってそうだ

 ズズズズズズ・・・・・

「な、何〜!?」

また地震だ。さっきより大きい

「この氣は・・」

「気を付けるでござる。どうやら、また先程の巨大昆虫のようでござるよ」

その通りだった

リサ達の前方に現れたものは先程とは別の陸用バイキングだったのだ

「・・・・『不死身』と名乗る事だけはある
 この高さから落ちても無傷とは。・・・フングス殿、流石(さすが)でござるな!」

バイキングの頭に乗っていた者、まさしくフングスであった

「マサムネ、貴様もなかなかの腕をもっているようだな。
 どうだ、伯爵閣下のもとに使えてみる気はないか?
 それならば助けてやらん事もないが・・・・・?」

フングスの言葉を聞き黙り込むマサムネ

「・・・・・・・・断る。
 フングス殿、御主は地下鉄で拙者に申したではないか!
 『外界人は始末しなければならぬ』と・・・
 それならば下手な勧誘などせず己の職務、全力でまっとうして見せるでござる!!」

「マサムネさん、そんな事言わなくても・・・・・」

敵であるフングスにわざわざ活を入れるマサムネ

「残念だ。貴様のような者を消さなければならぬとは・・・・
 よかろう、このフングス全力をもって貴様らを始末してやる!!」

ピーーーーーーーー!

フングスのパイプが合図に鳴り響き、地中にいたバイキング達が地上に出てくる

「いっぱい来たー!!! リサァ、氣現術でなんとかしてー!!」

「こんな数じゃ私にはどうする事も・・・・」

慌てているリサ達をよそに、マサムネは気を落ち着かせ腰の刀に手を添えた

「こちらも全力でお相手いたそう!!」

マサムネが刀を鞘(さや)から引き抜くと同時に

辺りは紫の光に包まれる・・・



「(氣・・・この氣はまさか・・・・!?)」



何も起こらない、目の前のバイキング達はまったくの無傷

「・・・フハハハハ!
 その刀からどんな技が繰り出されるかと思いきや、
 どうやら大きく空振りしただけのようだな!」

何も無いと判ったフングス、パイプを構えバイキングに攻撃命令を出そうとしていた

「おじさんのバカー!責任とってよぉー!!」

アイとユウを抱き抱えるリサ

「覚悟するがいい!」

フングスがパイプを鳴らす

しかしバイキング達は動かない

よく見ると、バイキング達の身体に切れ目が入っていく

その切れ目がバイキング全員に入る

その途端バイキング達は真っ二つになってしまった

倒れ行くバイキングから振り落とされるが何とか着地したフングス

「きっ貴様、一体何をした!!?」

「ただの・・・『居合抜き』でござる」

マサムネは『ただの』と軽く言ったが

その技の強力さは切り裂かれたバイキング達の姿が物語っていた

「まだやるつもりでござるか?」

「すごい・・・」

ただ、ただマサムネの戦いに見とれるユウ

しかし、フングスは諦めるつもりは無いようだ

「笑止!! 某がこの程度で降参すると思ったか!!」

ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先程より

大きく、長く、パイプを吹く

「まさか、あのモンスターがまだいるの!?」

「その通り、だが今度のバイキングはあのように簡単にはやられはせんぞ
 今、某が呼んだのはこの山の主なのだからな!!」

確かに地面から出た来たバイキングは先程より数倍は大きいものだった

「おじさん、またさっきみたいにスパーンとやっちゃてよ!」

だが、刀を構えようとはしない

「どうしたの?マサムネさん?」

「・・・ダメでござる。先程、フングス殿に使ったので二回目。
 これ以上この『紫怨』を続けて使う事は逆に危険でござる!」

「えぇ〜どうしてぇ!!?」

今説明している時間は無いようだ。

巨大バイキングはゆっくりとこちらに近づいてきた

「さあ、観念するのだな。バイキング、溶解液・・・」

フングスの動きが止まる

何かと思いフングスの目線の先を見た



「か・・・・風!!!」

「風・・・?」

そこには黒き風が立っていた

風は無言でユウ達を見下ろしていた

「丁度良い、探す手間が省けたぞ。
 こいつ等共々始末してくれるわ!!」

「動いた・・・」

風の右腕についている魔銃の球が光りだす

「ソイル、我が力!」

魔銃からドリル状の物が出て来て激しく回転しだす

そして粉々に分解したかと思うとそれは銃の形に組み合わさっていった

黄金に光り輝く銃、それが魔銃

「魔銃・・・解凍!」

魔銃が解凍されたのを見てリサ達は慌て出す

「いけない、このままじゃ・・・・・ユウ!」

「うん、チョビ!」

ユウがチョビに合図を送る

すると、チョビの首輪『イザベラ』が光りだし

形を変えながらチョビの身体を白い鎧の様な物で包んでいく

「クエエェーー!!」

シエルチョコボに変身したチョビ

その一瞬の出来事にマサムネは驚く

「なんと、これは一体・・・?」

「驚くのは後でいいから、早く乗ってぇ!!」

四人を乗せるとチョビの鎧からは透明な翼が造られ

後ろから炎を噴出し、チョビ達は空高く舞い上がる

「お前に相応しい、ソイルは決まった!」

腰のベルトからのソイルを取り出す



「闇を貫く閃光、ライトニングイエロー!」



「永久に楔打つ光 オートシルバー!」



「そして・・・、悪を裁く完全なる正義、ホーリーホワイト」



ソイルはそれぞれ魔銃にセットされてゆく

魔銃の中で高圧的にエネルギーが高まってゆくソイル



「出でよ・・・・召喚獣アレクサンダー!!」



フングスに向けて放たれた三色の光

一つに混ざり合いロボットのような物に姿を変えていく

巨大な腕と一本の足だけで分厚い鎧で包んだ身体を支えている

それはまるで城といってもよいものだった

「おのれ、こんなただデカイだけのゴーレムなど・・・・」

フングスが攻撃しようとしたその時だった

アレクサンダーの頭部に光が集中する

一瞬、レーザー光線のようなものが眼から発射されたのが見えた

そして、爆音と共に周りに眩し過ぎるほどの光が広がっていく

フングスは巨大バイキング共々その光の中で消えていった・・・



その一部始終をユウ達は空の上から見ていた

「なんという強大な力・・・・」

魔銃の威力を初めて見て、声を失うマサムネ



その時、彼の刀は何かに反応しているかのように妖しく輝いていた・・・









ファイナルファンタジーアンリミテッド



予言します・・・

襲いくるオメガの魔の手

彼は話す、呪われし刀の事を

『紫怨〜かけらのだいしょう〜』

次回もアンリミテッドの導きを・・・・




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