異界の夜へようこそ・・

私はファーブラ『導く者』

迷い人達は一人の侍に出会う

四凱将をも打ち破るその強さ、でも

迷い人達は知らない

彼が持つ悲しい過去を

呪われしその刀の真実を・・・・・


『紫怨〜かけらのだいしょう〜』


岩山にできた大きなクレーター

風の呼び出した召喚獣の力によるものだった

「風が・・・いる!!」

ユウは立ち込める砂塵の中に風を見た

「え!?どこにいるの?」

「それ本当に風のおじさんなの?何かと見間違えたんじゃない?
 おじさんてば、すぐにどこか行っちゃうからもういないんじゃないかな?」

リサ達には見つけられないようだ。しかしユウには見える

右手に魔銃をつけた風の姿が

「ユウ殿、拙者にも見えるでござる!・・・あれほどの爆発でよもや無事とは・・ ・」

「チョビ、あそこに降りて!」

シエルになっていたチョビはクレーターへと降りて行く



砂塵はすっかり落ち着き、ユウ達は風を探す

しかし、一向に風は見つからない

「どこにもいないじゃん」

「でも、さっき確かにここにいたんだよ」

ユウはそう言うが周りには誰もいない

「アイ、もう少し探してみましょう。ね?」

「もう、リサまでそんな事言ってぇー!」

そんな時、マサムネが向こうから大声で皆を呼ぶ

「皆―!見つけたでござる、風殿がいたでござるよー!」

その言葉を聞き皆はすぐさま、その場所に走って行った

どうやら砂塵が全身についていた為、保護色で見えなくなっていたらしい

「カメレオンみたい・・・」

やっと見つけた黒き風の男

だが、風に対してマサムネはいやに深刻な顔で見ている

「・・・・・・御主がアイ殿とユウ殿の父でござるか?」

「・・・エェッ!!?」

全員(風を抜かす)が驚きマサムネを見る

リサの時と同じ様に、とんでもない勘違いをしているようだ

「よいか風殿!この異界、いつ何時、何が起こるかわからんのでござる!
 そのような異境の地に家族を置きざりにし、自分勝手に好きな場所に行くなど・・・
 御主には責任感というものが無いのでござるか!?
 少しは親としての自覚を・・・・」

何か、マサムネらしくない

だんだんと口調が荒く、感情的になっていく

そして、彼の眼には怒りと悲しみが入り混じっている様に見えた

風は、ただ無言でその話を聞いていた

「マサムネさん、違うよ!風は・・」

ユウがマサムネを止めようとしたその時



「クエエェェーー」

イザベルと共にチョビが鳴く

「・・・大変だ!早くしないと地下鉄が発車しちゃうって!!」

ユウの言葉を聞き、皆は急いで地下鉄へと向かって走る

無論、風を連れて・・・・





「なんと・・・・行方不明になった両親を探す為にこの異界へ・・・・!?」



走り行く地下鉄の中、ユウ達はマサムネに全てを話す

「マサムネさんはこの子達の両親の事、何か知りませんか?」

「・・・いや、悪いが何も知らんのでござるよ・・・」

双子はガックリと肩を落とす

「だがしかし・・」

と、マサムネは続けた

「こうやって出会ったのも何かの縁。
 拙者、アイ殿とユウ殿の御両親を捜すこの旅に同行させてもらうでござる!」

「えーッ!?本当、おじさん?」

「武士に二言は無いでござる!!」

新たな仲間の出現に喜ぶ双子。マサムネは何か懐かしそうに二人を見ていた

「よかったねリサ。おじさん強いから、戦いも楽になるんじゃない?」

確かに、あのバイキングをも一撃で倒すほどの強さ

一緒に来てくれたら、どれだけ助かる事だろう

「どうもありがとうございます」

深々と頭を下げ感謝するリサを見て、マサムネは少し照れている

「いやいや、旅は道連れ世は情け!
 大勢で捜した方が見つかりやすいでござろう?
 それにー・・・・」

そこまで言って口篭ったマサムネだが、アイとユウはその言葉を聞き逃さなかった

「それに?」

「何?おじさんも何か探してるの?」

「え?あ、いや、何でもないでござる。さあ、そろそろ寝る時間でござるよ」

話をそらし、わざわざ風を連れて隣の車両に移動するマサムネ

「こらー、逃げるなー!」

「そんな事言わないでアイ。誰にだって言いたくない事はあるわ」

追いかけようとするアイを止めるリサ

「まだ地下鉄は止まりそうにもないし、
 マサムネさんの言うとおり、今の内に眠っておいた方が良いわね」

「クエェ〜」

「お姉ちゃん、チョビも眠たいって言ってるよ」

最初は目に角を立てていたアイもあくびを一つ、

「ふぁ〜・・なんだかアタシも眠くなってきちゃった・・・」

そう言ってユウと一緒にリサの隣へ座る

「おやすみ、リサ」

「おやすみ。アイ、ユウ」

そして、リサ達はひと時の休息をとる

この後に起こる事も知らずに・・・・・



隣の車両ではマサムネと風が少し間を取り座っていた

「風殿、先程はすまなかったでござるな」

「・・・・・」

風は横目で何も言わずマサムネを見る

「いやはや、怒るのも当然でござろう。
 拙者、どうも早とちりしやすいのでござるよ。
 御主とリサ殿をあの子らの親と勘違いしてしまうとは・・・・
 落ち着いて考えれば、わかる事でござるのにな」

  また勘違いをしている。

風の眼を見て怒っていると思ったのだろうが

風の眼つきの悪さは普段からこんな感じなのだ

それに気付かずマサムネは話を続ける

「しかし・・・あの3人を見ていると、思い出してしまうのでござる・・・」

ゆっくりと眼を閉じ、マサムネは思い出す



幼い二人の子供、その子達と手を繋いでいる着物を着た黒髪の女性

激しく燃え上がる炎、崩れゆく大地、地割れが人々を飲み込んでいく

彼女達を救おうと手を伸ばす・・・しかし彼女の手には届かなかった・・・



一筋の涙が頬をつたう

「・・おっと、いかんでござるな。歳を取るとどうも涙もろくなってしまうでござる ・・」

涙を拭うマサムネ。終始無言だった風が一言だけ喋った

「・・・・涙・・・・・」

突然、腰の刀が震え出す

岩山の時よりも激しく発する紫色の光

「ッ!! 『紫怨』が反応している!?・・・・・まさか!!!」

風もその気配に気付いたらしい、二人は後ろの車両の方へと目をやった

「・・・あの時と・・・・同じオメガ・・・・・・!!?」



前の車両で仮眠を取っていたリサは感じた

あの禍々しい氣の流れを

「・・・この氣はまさか・・オメガ!!?
 アイ、ユウ、起きて!!」

「どうしたの、リサ?」

「まだ寝たばっかりでしょ〜」

いきなり起こされたので、二人とも眼ボケ気味だ

すると後ろの車両からマサムネが大声で話す

「皆、気を付けるでござる!!
 オメガが・・オメガが追って来るでござるぞ!!」

「オ、オメガ〜!!?」

窓を開け、後ろのほうを見るアイとユウ

地下鉄を追って来るもの。それは紛れもない『オメガ』の一部であった

球体を中心に何本もの触手の様なものがはえている

「あれって、風が前に倒したやつじゃ・・」

「も〜、何でアタシ達ばっかり襲ってくるの〜?!」

オメガは触手を振り上げ、地下鉄に攻撃を加える

そのあまりの破壊力に地下鉄は大きく揺れ後ろの何車両かは壊されてしまう

揺れの衝撃でアイとユウは床に叩きつけられた

「アイ、ユウ、しっかりして!」

リサの呼びかけに答えない、意識を失ってしまったらしい

そこにオメガの第二撃が与えられる

「キャアァァーー」

今度はリサが吹き飛ばされる

飛ばされた先には車両に設置されている鉄棒

「(ダメ、ぶつかるッ・・・!)」

そう思ったその時

間一髪、マサムネがリサをキャッチしたのだった

静かにリサを床に降ろし、ゆっくりとオメガの方に向かうマサムネ

「マサムネさ・・・」



声をかけようとしたが、かけられなかった

リサは感じた。マサムネの氣を

体の周りに渦巻く、静かな怒りを・・

「なんて・・・悲しい氣なの・・・」



迫り来るオメガ、その前にリサ達を守る様に立ち塞がるマサムネ

「(もう・・拙者の世界の様に・・させはせんぞ・・・!!)」

紫怨を鞘から抜き、オメガに向けて構える

「さあ、来いオメガ! お前の狙いはこの刀であろう!
 自分自身の欠片、オメガの欠片でできたこの『紫怨』が!!」

オメガを前に紫怨の光は徐々に強くなっていく

「(オメガの欠片・・・・?)」

しばし呆然としていたリサだったが、すぐに我に帰ると近くにいた風を見て

「お願い、あの人を助けて!
 どんなに強っかたとしてもオメガに勝てるはずないわ!!」

リサは必死で頼むが風は無言で魔銃を見るだけだった

「・・・・動かない・・・・」



オメガが触手を振り上げた

そしてマサムネ目掛けて振り下ろす

「我が世界の・・いや、キキョウ達の仇、ここで討たせてもらう!」

マサムネの紫怨が大きく唸り、オメガの触手を切り落とす

本体から離れた触手は動きを止め、少しずつその形を変え、

ボウリングの球と同じぐらいの大きさのクリスタルとなった

「これがオメガの欠片・・・?」

「オメガは元々強い破壊衝動を持っている物質、
 その衝動が収まればこの様に結晶化するのでござる。
 それを我が『ソウシュウ一派』の技術で加工し作り出したのがこの『紫怨』、
 切れ味、美しさ、どれをとっても最高の刀でござった・・・・
 しかし、紫怨はオメガを誘う特殊な信号を出していたのでござる!」

「そして、その信号を受けてやって来たのが、あのオメガ・・・」

マサムネは小さく頷く

「いかにも・・・・・あのオメガは拙者の世界を滅ぼしたものと同じものでござる !!」

触手を切られたショックで動きを止めていたオメガだったが再び攻撃を開始した

マサムネもそれに合わせ、触手を切ろうとする。しかし、

     バシィッッ!!

「ぐわあぁぁぁ!!」

横からの触手に弾き飛ばされ、マサムネは壁に身体を打ちつける

「マサムネさん!」

「おじさん、大丈夫!?」

とっさにアイとユウが声を上げ、リサはそれに驚く

「アイ、ユウ!? 良かった無事だったのね!」

「おじさんが刀の説明してた頃に目が覚めて・・・・って無事じゃないわよぉ〜!」

アイが叫んだとおり、まだ事態は何も解決はしていない

オメガは触手をくねらせ一斉に地下鉄を攻撃する

間一髪、リサ達は風とマサムネを連れ出し前の車両に逃げ込む

圧倒的なオメガの攻撃を何回も立て続けに受け、地下鉄はすでに全壊寸前だった

もう機関室とリサ達のいる車両しか残っていない

あと一回でも攻撃を加えたら地下鉄は文字通りバラバラになってしまうだろう

「ぐっ・・・・オ・・メ・ガァ・・・貴様は・・拙者が・・・この手で!!」

「マサムネさん、動いちゃダメ! こんな酷い怪我で戦うなんて無理よ!!」

灰色の道衣が目で見てもわかるほどに赤く染まっていく

それでもマサムネは戦いを止めようとはしない

その間にもオメガは迫り地下鉄との距離をどんどん縮めていく

最後の一発、これで完全に破壊するつもりなのだろう。
オメガがゆっくりと触手を振り上げ───

その時だった

「・・・動いた・・・・!」

魔銃の光を受け、オメガの動きが一瞬止まる

「ソイル、我が力!」

ドリルを激しく回転させ魔銃は微塵に分解される

分解された魔銃は風の右手を中心に銃の形を構成していく

「魔銃・・・解凍!」

風は魔銃をオメガに向け、ベルトからソイルを取り出した

「お前に相応しい、ソイルは決まった!」



「全てを薙ぎ払う怒り、ストームブルー!」



「湧き上がる血の猛り、ヒートクリムゾン!」



「そして・・・、死をも恐れぬ心、アイゼンヴァイオレット!」



ソイルは次々に魔銃へとセットされていく。そして、

「砕け散れ・・・・召喚獣ピュロボロス!!」



魔銃から放たれた三色の光は混ざり合い一つになったあと、
オメガを囲むように七つに分かれた

やがて、その姿を大きな爆弾の様に変えていく

次の瞬間・・・・

  ドゴォォォーーーーーーン!!!!!

自爆、オメガを囲んだまま自爆したのだ

その衝撃で地下鉄は大きく揺れはしたがなんとか壊れずには済んだ

オメガを倒したと思いホッと息をつくリサ達。
しかし、これで終わるオメガではなかった

自爆したピュロボロスの爆煙の中から触手が何本も現れる

「まだ、動いてる・・・!」

「おじさんの召喚獣でも倒せないの〜!?」

「無念・・・・・・」

 ガゴォッ!!!

オメガの最後の攻撃によりリサ達は気絶し、地下鉄の連結部分がはずれる

薄れゆく意識の中、リサが見た光景。それは

オメガが自分達のいる車両ではなく、機関室を破壊していたのだ

機関室はバラバラに砕けちる。すると、中心部分からクリスタルが飛び出す

「・・・オメガの・・・欠片・・・・・?」

リサの意識はそこで途絶える。
クリスタルを自分の身体に取り込むと、オメガはゆっくりと引き返して行った



移動力を失い、次元トンネルの中を漂流するリサ達の乗る車両

そこに、近づいて来る羽の付いた大きな貝

その中に居たのは、ローブを着た銀髪の女性ファーブラ

「私は導く者・・・・だから、助けてあげる事は出来ないのです。
 ポシェポケ、迷い人達を頼みましたよ」

その声が聞こえたのか、ポシェポケは口を閉じたままニヤリと笑う

ファーブラは貝の館と車両を接着させ、トンネル内を移動する

「さあ、次元トンネルの外へと導きましょう」


そう言ってファーブラはリサ達をどこかへと連れて行った・・・・









ファイナルファンタジーアンリミテッド



予言します・・・

浅い眠りにつく迷い人達

その裏では

悪しき者達の誇りを懸けた戦いが

今、静かに始まろうとしていた

『四幻将〜あらたなるてき〜』

次回もアンリミテッドの導きを・・・・




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