「まぁ―ったく、全員あわせてもこれだけの欠片しか集められないなんて・・・・ハァ。
 『ガウディウム四凱将』 僕は気まぐれで君達にこの称号を与えたわけじゃないんだ よ!?
 それに見合うだけの仕事をしてくれないと・・・僕、とぉっても困るんだよねぇ」

伯爵はオスカーがすぐさま用意した代わりのシチューを口に運び文句を言い続けた

「ねぇ、伯爵様ぁん。『これだけ』って、私達の集めた欠片ちゃん達はどの位ある のぉん?」

隣に座っていたヘルバが伯爵の文句をかき消すように質問をする

伯爵は何も答えず目線をオスカーに向ける

するとオスカーは先程と同じ様に指を軽く鳴らした

「スタウロス」

次に出て来たのは細身で両脇に剣を刺した人形

持っていた箱は先程とそう変わらない大きさ

その中身もはたから見るとそう大差無い様に見えた

「やだわぁん伯爵様ったらぁん。そんなに変わらないじゃありませんかぁ!」

「ふん、まったくコレだから頭に花が咲いてる奴は・・・・。
 自分が危機に直面しているという事も判ってないと見える!」

「ピィ〜ストちゃ〜ん。何か言ったかしらぁん!!」

リムジンから頭半分出していたピストに睨みを効かせるヘルバ

「いやぁ、私は本当の事を言っただけですけどねぇ〜」

ピストは皮肉めいた口調でそう言い返した

その険悪なムードを横で只見ているフングス

間に割って入ったのはオスカーだった

「いやいやまぁまぁ、お互いにこのオメガの欠片の量。
 確かに見た目ではどちらが多いかは判断つきますまい。しかし―・・・」

オスカーは何かを言いかけるが急に話を止め扉の方に振り向いた

「あぁ、お帰りになられたようですね。
 フングス様、申し訳ありませんが少し退いて頂けないでしょうか?
 そこに立っていますと・・・危ないですよ」

「何ぃ? 帰ってきたって一体誰が・・・ヌオァ!!?」

突然、後ろの扉が勢いよく開け放たれフングスはそれに突き飛ばされる

ピストのリムジン近くまで飛ばされたが欠片が入った包みは手放さなかったらしい

「ぬぅ、何者だ!?」

フングス含め広間に居た全員の眼は扉を開けた者達へと向けられた

其処にいたのは四人。中心にいたリーダーらしき人物が前へと出てくる

「コラ、オッサン。人に名前聞く時はまず自分から名乗るもんやろ!?」

「オ、オッサンだとぉ!!?」

蒼髪に紅い眼帯、深き蒼のマントに身を包んだその男は

見た目に似つかわしくない言葉使いでフングスに名乗を強請した

「ははぁ、あんさんがあのフングス・・・・。
 ・・・と言う事は閣下の隣にいる女がヘルバっちゅ―奴やね?」

男は細目で二人を眺めてそう言った

「貴様、某達を知っているとは・・・・」

「一体誰なのぉん?」

「奴ら、奴らですよ!! この大量の欠片を集めた者達はッ!」

リムジンから飛び出し四人を指差すピスト、その言葉に驚くフングスとヘルバ

「じゃ、初対面の御二人さんに自分らの紹介でもしましょか。
 まず始めに、自分は『蒼き月』。まぁ、気楽に『魔術師』って呼んでも構わへんよ !」

すると蒼きマントの男の横から黒髪、青斑眼鏡、研究者風の男が出て来た

「そしてオレ様が『レフォル』。良ぉく覚えとけよ、
 異界の歴史に名を残すであろう偉大な科学者の名・・・・」

「ジャジャーン! 自己紹介〜、『フォルミード』だよ! 宜しくねぇ〜!!」

「五月蝿い黙れフォルミード! まだオレ様が喋ってる途中だろうが!」

横から割り込んできたのは全身緑系の服を着て、幅広帽子を被り、

布にペンで書いた程度の簡単な顔、その姿はまるで案山子そのもの

細身の身体に似合わずその身長はフングスと同等の高さを持っている

しかし身体の大きさに似合わない喋り方はまるで子供の様だった

「・・・・? アルギラ・・・次はお前の番やで。
 人の後ろにつっ立っとらんで、早よ自己紹介しぃや!」

無言で奥から出て来たのは灰色に近い長髪で、紫を主とした踊り子系の服を着た女性

だが、彼女の顔を見てヘルバは驚いた

似ている

アルギラの顔はヘルバのそれとあまりにも似過ぎていた

違いを挙げるとすれば肌が緑で無く瞳の色が淡い茶色をしており頭に花が咲いていな い事位

「・・・ワタシの名は『アルギラ』、そしてこの子が『シャコウ』・・・」

アルギラは大事そうに片手に抱えた土偶に目線を向けた

「そんな事よりもぉ、な〜んで顔がそんなに私と似てるのか、
 そっちの方を詳しく教えて欲しいんだけどぉ?」

ヘルバの問いに答えるか答えぬか迷うアルギラ

しかし急に横から傍観していたオスカーが口を挟んでくる

「ヘルバ様、真申し訳ありません。
 伯爵様が皆様に大事なお話があるそうなので
 その話題は又今度、という事で・・・・・伯爵様、どうぞ」

身体をグニャっと回転させオスカーは伯爵に一礼した

ちょうどシチューを食べ終え、スプーンを置く伯爵

少し汚れた口の周りをピンク色のハンカチで綺麗に拭くヘルバ

「ん、じゃあ皆僕の前に一列に並んで。 ヘルバもオスカーも、勿論魔剣士もね!」





伯爵の前に並ぶ異なる世界から集った異形の者達

魔剣士、フングス、ピスト、ヘルバ、オスカーの五凱将

魔術師、フォルミード、レフォル、アルギラの来訪者達



九人を一列にした後、伯爵は台座から先割れスプーン状の杖を取り出し

そして右から一人ずつ指していく

「オスカー、ヘルバ、ピスト、魔剣士・・・・
 皆、今まで僕の下で働いて判るとは思うけど、
 僕は使えないものより使えるものの方が好きなんだ。判る?」

「? は、伯爵様。某の名が呼ばれておりませんが・・・?」

自分が抜かされている事に気づき恐る恐る伯爵に聞くフングス

その問いに対する伯爵の答えは彼にとってあまりにも辛いものだった

「だってフングス、君は五凱将じゃないじゃないか」

「なっ・・・・!!?」

パイプを口から落とし、呆然と立ち尽くすフングス

その様子を見て口元を抑えて笑うヘルバと目元をニヤつかせるピスト

しかしその二人も伯爵の冷たい睨みに動きが固まる

伯爵はフゥっと一息つき、魔術師含む四人に眼を向け一枚の紙を取り出した

「・・・・・オスカー、これは本当なんだね?」

「えぇ、パティシエからの正式な報告書類にございますので間違いないかと・・・」

ぐにゃりと身体を折り曲げるオスカー。その仮面の下の表情は誰にも読み取れない

「なるほどね・・・じゃ、やっぱり仕方ないか。」

そう言うと伯爵はスプーン杖で魔術師達四人を指し広間全体に届くような声で言った

「魔術師、アルギラ、フォルミード、レフォル! 今日から君達が四凱将だ!」

伯爵の言葉に落胆の色を隠せないピスト

いきなりの事態に困惑気味のフングスとヘルバ

魔剣士は一言も発さずに傍観しているだけ

皆が静まり返るその場で口を開いたのはオスカーだった

「・・・・パティシエに検針してもらったところ私達の集めた欠片は
 魔術師様達の集めた欠片の量に一歩及ばず・・・・
 至極残念ですがこれも当然の結果かと・・・・」

「まぁ、そういう事だ。・・・・・おっと、オレ様達を恨むのはお門違いだぞ!?
 恨むならオレ様達じゃなく、自分達の実力の無さを恨むんだなぁ!! クカカカカカ カ・・・・」

広間に響くレフォルの笑い声、魔術師達には止める様子など感じられない

元・四凱将達は只黙っているしかなかった

しかし、レフォルの悪辣な笑い声に怒りが込み上げてきたフングス

ふと、手に持っていた風呂敷包みの事を思い出し、ニヤリと笑うとパイプを一吹き

レフォルの声を掻き消すほどの甲高い音を鳴らした

そのあまり轟音に一同驚き伯爵はフングスを睨みつけた

「フングス! なんだいいきなり、ビックリするじゃないか!!」

怒り出す伯爵、しかしフングスは胸を張り敬礼した

「は、申し訳ありません! このフングス、既に五凱将から解任済み。
 しかしながら、是非とも閣下に見て頂きたい物がありまして・・・・
 オスカー、先程某達の欠片の量が『一歩及ばず』・・・・と、そう言ったな!?」

「はい、その通りでございます。」

「だーからどうした!? たった少しの差でもオレ様達の勝ちなんだよ!!
 お前らは負けたんだ! 素直にそれを認めろ、この無能どもがぁ!!!」

フングス達を指差し目を血走らせながら罵詈雑言を浴びせ掛けるレフォル

手を出せず、只睨むことしか出来ないもと・四凱将達

だが、レフォルも突然頭から水を浴びせ掛けられ一瞬固まる

後ろにはバケツを持ったフォルミード

「頭冷えたかな〜? レフォルはす〜ぐに熱くなる〜♪」

掛けられた水が一瞬にして蒸発し頭から湯気を出すレフォル

「ぐわっはっはっはっは!良い様だな!!」

黙っているピスト達とは違い、レフォルの様に大笑いするフングス

「それは負け惜しみか無能キノコ? いくら吼えてもお前らの負けは変わり無い事だ !」

ついに怒りを抑えられなくなったピストとヘルバ

「ちょっとぉフングスちゃん、あんな事言わせておいて良いのぉ!?」

「ここまで言われて笑っているなんて貴方らしくないですよ!?」

フングスは指先でパイプをくいと上げ横目で二人をちらっと見る

「・・・・・ヘルバ、ピスト、オスカー、魔剣士、これは貸しにしとくぞ?」

フングスの言ってる意味が判らずお互いを見合す二人

するとフングスは床に置いといた風呂敷包みを伯爵にさし出す

「閣下、これを某達全員の分として閣下に献上いたします!!」

「なんだい、この汚いの?」

伯爵は恐る恐る結びを解き中身を出す

その瞬間、辺り一面に紫の光がひろがった

「・・・・・・・・・・・・!!」

もちろん中から出てきたのは無数のオメガの欠片

数多の欠片の量にその場にいた者達全員が目を丸くする

欠片の事を知っていたヘルバもこの量には驚愕した

「うわぁ・・・・凄いよフングス! 君もやれば出来るんだねぇ!!」

先程の不満な表情が消え、子供の様に無邪気な笑顔を浮かべる伯爵

「は、勿体無き御言葉!! 
 ・・・・・・恐れ多くもこのフングス、閣下に一つの要望があるのです!」

踵を鳴らし、敬礼をした後フングスは伯爵にある頼みを願い出た

「うん、別に良いよ。これだけの欠片を集めたんだからね!何でも言って。」

普段なら有無を言わせずに黙らせる伯爵だが、

この時はフングスの手柄を認めたのか珍しく願いを聞いた

「・・・・・某、ヘルバ、ピスト、オスカー、魔剣士の五人を
 もう一度五凱将の座に就かせて頂きたいのであります!」

その願いに唖然とするレフォル、ヘルバ、ピストの三人

「そ・・・・そんなふざけた願い伯爵閣下が聞き入れるはずないだろう!?
 今更オメガの欠片持って来たって遅いんだよ! 四凱将の座はオレ様達のも・・」

「良いよ」

「は・・・・?」

レフォルの叫びも空しく伯爵の返事に掻き消されヘルバ達からは歓声が上がった

呆然と立ち尽くすレフォルをピストがちらりと見た

「『恨むんなら、自分達の実力の無さを恨め』・・・でしたっけ?
 その言葉、そっくり返しますよ!?シャーッシャッシャッシャッシャッシャァ!!」

まったく同じ言葉をよりによってあのピストに言い返され悔しさに歯軋りするレフォ ル

「でもまぁ、これだけのオメガの欠片を集めた魔術師達も何か肩書きが欲しいでしょ ?
 オスカー、何か良いの無いかな?」

「それならば五凱将補佐・・・・という事で『四幻将』など如何でしょうか?」

オスカーは少しだけ悩んだ様子を見せ『四幻将』という名前を上げた

「うん、良いねそれにしよう! 今日から君達は四幻将だ!

 頑張れば五凱将に成れるかもしれないからね!!」

伯爵のその言葉で四幻将達の(特にレフォルの)闘志は勢い良く燃え上がる

無論、その事は五凱将達も十分承知していた



解散後、長廊下を歩いている四幻将

「クカァ・・・・! まさかあの無能キノコがあんな大量の欠片を持って来るとは ・・・」

「ざ〜んぱい、ざ〜んぱい、オメデトォ〜♪」

「五月蝿い!! 何もめでたくないだろうが!!」

フォルミードを小突くレフォル、しかしフォルミードに痛む様子は無い

アルギラがシャコウを撫でながら口を開く

「・・・・あの人は、『死』を何度も体験しています・・・だから出来る事もある・・・」

「あの量・・・一体どの位のオメガと戦ったんやろなぁ?
 まさに、『窮鼠、猫を噛む』ってやっちゃね!
 『死』を恐れない奴ほど恐ろしいもんもおらんわ。」

先頭を歩く魔術師、右目の眼帯が怪しく輝いた

「まぁ、あとは・・・・・『混沌』やな・・・・・」

口元を微かに歪ませる魔術師、ふと何かに気づいた様に後ろに振り向いた

「何々? 何かいたの〜?」

「あぁ、何もおらへんよフォルミード。 ・・・・・・当分退屈せずに済みそうやで・・・・」



魔術師達が行った後、柱の影からオスカーが現れる

「やれやれ、なかなか勘が鋭い様で・・・・いえ、まだ秘密があるようですね。」



そう言って、オスカーは影に潜り、後をつけて行った・・・・









ファイナルファンタジーアンリミテッド



予言します・・・

彼は知識を求める者

その為にはどんな犠牲をも払ってしまう

機械仕掛けのその身体が狙う者

発明家なる者に魔の手が迫る

『レフォル〜きょうきなるこころ〜』

次回もアンミリテッドの導きを・・・・




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