「異界の海へ、ようこそ。
   私はファーブラ、導く者。
   迷い人達は多くの兵士と共に潜航艇で海を進む。
   海ではいろいろな出会いがあります。
   黒き風、4凱将、コモディーン
   しかし、出会いはまだまだ続くのです。
   そして、また出会いがある。
   その者と出会う所、そこは・・・」


『深海〜あおきうみというもの〜』


海の底を進む潜航艇。今は何の問題も無く海底を航行している。
海底付近には異界の魚や海草が生えている。
「・・・よし、今は何もおきそうにないな。」
コモディーンが誇る天才発明家、シドは操縦席でレーダーを使って周りの安全を確かめていた。


今、潜航艇ではお昼ご飯が配られている。
コモディーンの秘密基地で再会した双子の姉弟やリサは
自分が製作した機械がつくったマッシュポテトを美味しそうに頬張っている。
「(そういえば・・・あの人は・・・)」
そうおもって見た先にいたのは―――――黒き風
彼の右腕には「魔銃」がある。
おもえば、いつも操縦室の壁に下を向いて寄りかかって座っている。
何も話すことも、動くこともなく。
「(ご飯、食べたのでしょうかねぇ?)」
シドは風がご飯を食べている姿を見たことがない。
しかし、今日は風がいつもとは違っていた。
何も喋らず、ジェーンから見える海の先を見ていた。
何もないはずの暗い深海の先を・・・・・・まるで・・・先に何がいるのかを確かめるように・・・・・・


「(なにか・・・・いる)」
風は確かめるように頭に言葉をうかべた。
「(しかし・・・・何が?)」


「・・・ご飯は食べましたか?」
シドは深海の奥を見ていた風に声をかけた。
その本人は・・・相変わらず深海を見ていた・・・
「(・・・・・・また、何も返事は返ってきませんか。)」
シドは風から返事が返ってこなかったので、立ち去ろうとした。


  出会いはまだ、終わらない・・・


「!!・・・いる・・・。」

「え?」
風がいきなり喋ったのでシドは驚いた。

それに、喋った内容にもおどろいた。
「・・・一体、何がいるんですか?」
そう聞いたときだった。
「シド、何かあったの?」
「!リサさん。」
昼ごはんを食べ終えて、操縦室に戻ってきたのはリサだった。
風はまだ深海の先を見ている。
「いや、彼が『いる』と言ったので・・・」
「え?もしかして伯爵の手下!!?」
そう言うとリサは周りの氣をよみはじめた。
シドは操縦席に座ってレーダーで周りを見た。
すこしの時間が流れて、先に声を上げたのは・・・いつの間にか立っていた風だった。
「海底だ。」
「「え?」」
シドとリサは同時に声を上げた。
「シド、敵か!!?」
コモディーンのリーダーであるナーヴも操縦室に来た。
「いいえ、あれは・・・」
シドがレーダーで海底を見ると、そこにいたのは・・・・・・
    人
とても暗い深海の底に沈んでいた。
「人だわ!!」
リサは声を上げた。
その声を聞いて、アイとユウとチョビも部屋に入ってくる。
「とにかく!ここはぼくのジェーンで救出します!」
シドが手元のスイッチを押して出てきた『カニハンド』で
海に沈んでいた人は潜航艇へと運ばれた。


深海に沈んでいたのは18歳ぐらいの人間。
青い髪を紐で1つにまとめ、紺色のマントを着けた人。
「・・・死んでるの?」
アイは心配そうに青い髪の人を見ていた。
「・・・!大変!!息をしていないわ・・・」
リサは声をあげた。
「え!?リサ、その人死んじゃうの!?
「・・・息がないのも大変だけど・・・」

 「(あの人に似た氣を感じる・・・)」

「!とにかく、何とかしないと・・・」
アイはあわてていた。
「そうだ!人工呼吸だよ、リサ!」
ユウは思い出したように言った。
「・・・また、しないといけないのね」
リサが人工呼吸をしぶしぶとしようとしたとき・・・
その人は目覚めた。
翡翠のような瞳は深海のように深く、澄んでいた。
ゆっくりと上半身を起こすと周りにいた人物達を調べるように見ていった。
「・・・・・ここは?」
やっと出された言葉はつぶやくように出された。
高くもなく、低くもない、澄んだ声だった。
「ここは、ぼくが造った潜航艇『ジェーン』の船内です。
 ぼくはシド、よろしく。ぼくは上にいるので、なにかあったら言ってください。」
シドはそう言うと操縦席へと上がっていった。
ジェーンに何か心配事でもあったらしい。
「あなたは・・・名前は?」
リサが聞いてみる。しかし、かえってきた返事は・・・
「・・・・・・『青き海』・・・・そう呼ばれていた・・・」
青い髪の人は名前を言おうか言わないか、少し考えたようにも見えた。
「・・・なんか、風のおじさんみたい。」
アイは頬を膨らませて言った。
「・・・・風・・・」
そう言って今度は、風と眼があった。
二人は声を出さず、眼で話しているようだった。
「(やっぱり、どこか似ている・・・)」
リサがそんなことを考えていた。



「ねえねえ?海はどうして異界を旅しているの?」
「海、教えてよ〜?」
海はアイとユウの質問ぜめにあっていた。
この双子は久々に新しい話相手に喜んでいるようだ。
「・・・私は異界を旅している。理由はない。」
海は少しうんざりしていた。
久々に起きたらいきなり質問ぜめというのは海の性格には絶対に合わないからだ。
「むぅ〜・・・答えてよ〜!お兄さん〜!!」
「・・・お、お兄さん!!!?」
アイの叫びに海は驚いた。
「・・・1つ言おう・・・私は男じゃない。女だ。」
「「ええ!!?女なの!!?(・・・男だと思った)」」
双子は声をそろえて言った。
「じゃあ、なんで異界を旅しているの?」
アイはもう一度聞きた。
「・・・・・私は混沌を倒すために異界にいる。」
「混沌ってどんなの?」
「・・・・知らない方がいい。」
ユウの問いかけに海は答えなかった。




シドは操縦席に座ってレーダーを見ていた。
「(にしても、海パズルは空間をつなげた立体空間パズル。
 出れるのも先になりそうだなぁ・・・)」
そんなことを考えていると、目の前の空間が歪んだ。
「!!?なんだ?」
そう言った後、煙とともに出てきたのは・・・・オレンジ色の髭の生え、杖をもったカエルだった。
「ゲコゲーコ!」
「ゲ、ゲコゲーコ!??」
シドは驚いた。
「キューブ・トードへようこそ!楽しいゲームの始まりだゲコ〜!」
カエルがそういうと潜航艇が揺れた。
キューブが動いたようだ。
シドが次に眼を開けて見たものは・・・
「泥の海!!?」
潜航艇はどんどん泥の海に沈んでいく。
「この泥の海の底はなーんもない真っ暗空間。さっきお前たちが落ちかけたところケロ〜。」
「くそ!エンジン全開で脱出を!!!」
「ト〜ド!!」
「ぐわ!!」
カエルは杖を振り、シドに当てると、シドは煙に包まれた。
シドは・・・・カエルになっていた。
「ゲ、ゲコォ!!???」
カエルになった自分の姿を見て、シドはあわてた。
「ひょっひょっひょ、その魔法が解けたらゲームクリア。上のキューブに上げてやるケロ。
 でも、海の底についたらゲームオーバー。混沌に落ちるケロ〜。」
「ゲコー!!ゲココーーーォ!!??」
カエル(シド)は無様な音を立てて落ちた。
「ま、がんばるケロ〜。」


「・・・・・・トード・・・」
青き海は聞こえてきた言葉を確かめるようにその言葉を言った。




その後、潜航艇内は大騒ぎだった。
泥の海に沈んでいることに気づいたコモディーンはあわてた。
ユウは「シドならきっとしっかり潜航艇を操縦してくれるよ。」と安心していたが、
そのシドがいないことに気づくと、総出でシド探しが始まった。
シドは、カエルになりながらも懸命に元に戻るために、船中を・・・逃げた。
コモディーンはカエルの天敵だったからだ。
そんなことをしているとどんどん時間はすすみ、潜航艇は海の底に近くなっていた。

  もう、だめか

そんなことを潜航艇にいた人々、風と海以外が考えたとき・・・
操縦室の扉が開いた。
シドが来た。
「シド、何処へ行っていたんだ!?」
ナーヴは帰ってきたシドにそう問いかけた。
「説明は後です。それより!エンジン全開で急いで脱出します!!」
シドはその気満々だった。が・・・
「あ〜、シド。それについて何だけど・・・」
「私たちが何とかしようといじってたら、ちょっとオーバーヒートして壊れちゃったんだ。」
リサとナーヴがいいにくそうに言った。
「壊したぁ〜〜??」
「だって、シドはいなくなるし、カエルが出るしで・・・・」
「・・・・・カエルね・・・ぼくを追いかけまわして、挙句の果てにジェーンを壊すなんて・・・・・」
シドは不気味な笑い声を上げ始めた。
「・・・なんか、ヤバくない?」
「まさか、前みたいに・・」
「ジェーン、落下します!!!」
「!上等だぜ!!ジェーンは何が何でも上のキューブに上げてやらぁ!!!!」
そう、シドが言うと装備していたバックパックから、たくさんのロボットアームが出てきた。
「(また、シドが切れた)」
誰かがそんなことを考えて、あっけにとられていた。
潜航艇はシドの操縦でどんどん上に上がり、
空間の切れ目を見るけるとワイヤーアームをのばし・・・
「いけぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
シドのかけ声とともに、泥の海の空間を脱出した。



上がったキューブは、穏やかな海面だった。
コモディーンの兵士達は互いに喜んでいた。
「やっぱりシドじゃなきゃだめね。」
「今までどこに行ってたのよー。」
そう言うリサとアイの横をシドは走って通り過ぎた。
「ジェーーーーーーーン!ごめんよぉーーーー!!」
「「「・・・・はぁ・・・」」」
操縦室には走っていくシドを半分あきれて見ていた。

「ごめんねぇ〜〜〜、ジェーン。エンジン、すぐに直してあげるからねぇ。」
そういいながらシドはエンジンに引っ付いていた。
その後ろにいる風に、気が付くこともなく。
「・・・カエル」
風はシドを見て一言、そう言った。

「・・・トード・・カエル・・シド・・・混沌・・・」
海は潜航艇内のどこかでそうつぶやいていた。




  「予言します。
   深海で出会った『青き海』。
   あの者は何かを知っている。
   出会いはまだまだ終わらない。
   次回、「魔道士〜霧と雲の対決〜」
   次回もアンリミテッドな導きを・・・」




[PR]動画