――――どうして私はあのとき・・・・じっとしていられなかったのだろう・・・・・・
    どうして 彼らに出会ってしまったのだろう・・・・・・・・・・・・・・・・

   プロローグII

竜族の村の出入り口 その近くにある民家で、1人の子供が何やらコソコソと何かをしている。
深みのある緑の髪を 背でたばね、明るい緑の民族衣装をまとっている子供だ・・・・
竜の血がまだ未熟らしく、翼が背中からはみ出ている。
彼の名は『深緑の剣(しんりょくのつるぎ)』、
この村で、一番の問題児として、いつ処分されるかも判らない子供だ。
なんと言っても、
1・喧嘩好き(大人相手でも勝つ)
2・盗むのが得意(おかげで村人は貴重品は奥に隠すはめになった)
そして・・・・・

「あった―!!・・・ふぅ、あのジジィ、一体どこに隠してあるかと思ったら・・・・」
『剣』は、ある民家に土足で入り込んでいたらしい・・・
木製の棚から、満月をかたどった焼き菓子を一掴みすると、
いつも身につけている腰の袋に押し込み、そそくさと民家から逃げ出した。(ダメだろ)
・・・・今は午後。昼食を食べ終わった村人達は、畑仕事や、ほかの世界へ出稼ぎに行ったり
広場で行う儀式の準備などで、ほとんど村には大人達はいない。
つまり、『剣』にとっては、今はちょうどいい時間帯なのだ・・・・・・・
そして、最後の民家に入ろうとしたとき・・・・(まだやんのか)

「ん?・・・・・・」
ふと誰かの走ってくる足音がして、『剣』はすばやく物陰に隠れた。
・・・・・自分とあまり変わらない年の子供が走ってくる。
「あれは・・・・鏡じゃねぇか・・・・」
『剣』は小さく呟いた。 紺色の髪、族長の衣装・・・・
まちがいない、あれは、この村の族長の長の息子の『紺色の鏡』だ。
けっこう仲のいい親友だったので、『剣』は物陰から出てきて手を振ろうとしたが・・・・・
『鏡』はそれを無視して、そのまま村の出入り口を走り抜けていってしまった。
「・・・・・??ったく!何だよあいつ・・・・」
『剣』は無視されて腹が立ったが、ふと『鏡』が走り抜けた出入り口を見つめ、首をかしげた。
「村の外は岩場ばっかだよな・・・・あいつ、一体なにしに行ったんだ・・・?」
竜に変化し、別の世界へ遊びに行ったのか、岩場をぬけた所にある川へ行ったのか・・・・
そんなことを予想して、興味をもった『剣』は、
『鏡』の後を追って自分も出入り口に走っていった・・・・・・。


『鏡』は村を出てからも走り続け、岩場の真ん中までくると立ち止まり、懐から横笛をとりだした。
しばらく辺りを見回したあとそれを吹く。
小鳥の鳴き声のような音色が響いた・・・・・
と、岩の後ろから、小さい女の子の顔がでてきた。
銀色の髪、紫のマント、・・・『銀の月光』だ。
しかし、なんだか不満そうな顔である。
「遅い」
月光は鏡を、ほとんど睨み付けながら言った。
「ごめんよ、近所の子供がウロウロしてて、なかなか抜け出せなかったんだ・・・・」
『鏡』は申し訳なさそうに、必死で弁解をした。
『月光』は、『鏡』をじっと見ると、
「・・・・まぁいいよ。さ、早く入った入った。」
なんだか、初めて会った時よりくだけた言い方だ。
あのときから二人は、この岩場に隠された『月光』の住まいで、毎日召喚獣の訓練をしたり、
竜族の物語を話しあったりして遊んでいるのだ。
岩場を上ると、小さな高原があった。
『月光』は、「ちょっと待っててね」と言うと、召喚道具を取りに行った。
後は『鏡』が残った。・・・・・

「・・・・・・・・・・・」
しばらく ぼけーっとした顔で突っ立っていたが、「さてと・・・」と吐息とともに呟くと、
「そろそろ出てきてくれないかな?『剣』?」
と、何もない空間に向かって言った。すると、岩陰から小さな翼をぱたぱたさせ、
ちっちゃな緑色の竜が出てきて、シュン!とあっという間に人の姿になった。
しかし、翼はそのままそいつにくっついたままだった。
『剣』は笑って、
「へへ、まぁいいじゃないか、悪く思うなよ」
「お前は別によくても、『月光』はお前の事知らないんだから、いきなり出ちゃまずいだろ」
『鏡』は、「でかい声を出すな」とでも言いたげに、
人差し指を口の前に出しながら、キョロキョロと辺りに目配せする。
「んー?それはこの前言ってた、夜族と竜族のハーフさんかい?かなり美人らしいじゃねぇか」
ケラケラ笑いながら言うこの陽気な彼が、問題児として見られる一番の理由は、
とにかく、村の掟に反抗しまくるのだ。
とくに、【竜の血を汚す者は死】という掟はかなり嫌っている。
その面では、二人とも気が合い、仲のいい(村人達には知られてないが)友達になっているのだ・・・・。
「まぁ・・・『剣』なら話は分かってくれるはずだけど・・・・」
『鏡』がため息をついたとき・・・・・

「・・・・・・・鏡・・・・・・・」
なんだか妙に低い少女の声。二人が驚いてそっちを見ると、
ちょうど、ドサドサと召喚道具と落とし、かまえている『月光』がいた。
しかも、こちらをすごい目で睨んでいる。ってゆーか『剣』のほうを睨んでいる。
「あ・・・あの『月光』?こいつは予の友達で、君の考えてるような人じゃなくて・・・・・」
「お、俺も、あの掟に反対派(?)なんだよ・・・だからそんなに警戒しなくても・・・」
真っ青な顔になり、冷や汗をダラダラ流しつつ、必死で誤解と解こうとがんばるが
・・・そんな彼らの努力のむなしく、

「召喚獣!!フェニックス!!」
「「ギャ――――――(涙)」」

《お見苦しいので、少々お待ちください》

「え?何?この人『鏡』の友達なの?あぁ、ゴメンゴメン」
さっきまでのおっかない顔はどこへやら、
『月光』は急に笑顔になり、プスプスと煙をあげている『剣』に謝った。
そのそばでは、必死に『剣』に呼びかけながら、『鏡』がケアルをしまくっていた。
「・・・・・き・・・きょう・・・・今度は ちゃんと紹介してから・・・がくっ」
「つるぎ――――――――!!!!???(汗)」

・・・・まぁ、こんなドタバタもあって、この物語に『深緑の剣』が登場することになる。
ったくよー・・・みんなホントに呑気だよなぁ・・・
この世界、いつ混沌に襲われるのかも判らないのに・・・・
ん?何?そういうあんたは誰だって?
俺の名前は『デス・ウィザード』少し長いんで『ウィン』と読んでもいい・・・

そう、俺がこの後、この世界を滅ぼしにくる混沌の一部さ・・・・・・・・・・・・・・





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