プロローグ



   植物生い茂る地。
 1人の少年が潜んでいる。
 その表情を支配しているのは…恐怖。
 まるで、誰かに見つかる事を恐れているかの様に。

 森の中から、誰かが現れた。
 逆光で容貌や服装などハッキリしないが、どうやら女性の様だ。
 少年は、息を殺す。
 (…どうか、見つかりませんように…‥…)
 けれども、足音は確実に少年が隠れている茂みへと近付いて来る。
 (来ないで…‥…!!!)
 そんな願いも無視して、足音は少年の目前で止んだ。
 「!!!!!!」
 顔を上げた少年の瞳に、淡い翡翠の剣が映る。
 「あ…ああああ…‥…」
 恐怖で声にならない声。
 剣が天高く掲げられる。
 もう逃げられない…
 そう思った瞬間、剣が振り下ろされた――――――――――――


 貝殻や真珠が散りばめられた空間。
 貝の館。
 銀髪の、ローブを纏った女性が全てを見通す瑠璃色の玉を翳す。

 「異界の夜へようこそ。
 私はファーブラ、導く者。
 今ここに、想像を絶する世界へ旅立とうとする者達がいます。」

   瑠璃色の玉には、たくさんの泡が舞う。
 そこに映し出されたのは、3人の者。
 1人は、少女。
 1人は、少年。
 1人は、20代前半ほどの女性。

 「そこは『異界』。旅人達は巻き込まれるでしょう。
 『混沌(カオス)』を、『オメガ』を巡る闘いに。」

 
 一瞬沈黙した後、彼女は言葉を紡ぐ。

 私は貴方達を助ける事は出来ません。
 私は導く者。
 そして、全てをただ見届ける者。

 だから、貴方達が決めなければいけないのです―――――――――




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