異界の夜へようこそ。
 私はルパ、見守る者。
 星輝く夜、彼らは混沌なる物語に
 巻き込まれる…。



   導き―いかいへのたびだち―




 深夜の学校に明るい声が響き渡る。
 「星キレ―vv」
 本当ならば無人であるはずの時間だったが、屋上には9つの人影があり、望遠鏡を覗いたり
 夜空を指差したり、大騒ぎしている。
 「…‥…‥…‥…あまりはしゃぐな。大声出したら近所に聞こえるだろうが。」
 呆れたような声で言ったのは、肩まで不規則に伸ばした髪を革紐で適当に結い上げた長身の女。
 口に銜えていたタバコの火を足で揉み消しながら、「全くお前らは」と言いたげな表情を浮かべている。
 「あはは、そうだったv」
 金髪の少女が軽く笑う。
 「笑い事じゃねえだろ、お前。」
 「真央さんは気にし過ぎ。」
 「お前らが気にし無さ過ぎなんだ…。」
 頭を両手で抱え、呻くように呟く。
 ――と。
 彼らの耳に或る音が届いた。
 一定のリズムで打ち寄せ、引いていく、それは…
 「…波の、音…?」
 「ああ…。」
 「だが、近くに海は無いはずだぜ?」
 「の、はずだよな。」
 口々に言い合う。
 視線を巡らせると、屋上の裏から、淡い光が漏れているのが見えた。
 得体の知れないもののような気もしたが、好奇心もあり、9人は音の正体を確かめようと近付いて行く。
 あったのは、巨大な貝の館。
 幾つもの真珠が浮遊する不思議なその空間に、ローブを着た銀髪の女性が立っていた。
 手に持つ瑠璃色の水晶玉を翳し、語る。
 「私はファーブラ、導く者。」
 「導く…者…?」
 訳が分からず、揃って首を傾げる。
 「そう。今から貴方達を、異界へ導きます。」
 「…‥…‥…‥…へ?」
 9人の口から間の抜けた声が出た。
 相手の言葉を理解出来ずに、キョトンとする。


 異界。
 それは、名の通り、自分達が今暮らしている世界とは「異なる」世界の事である。
 12年前に突如現れた「闇の柱」から行けるというその世界の事は、未だ謎に包まれている。
 何しろ、観光用に運行されていた遊覧船や漁師、興味本位で近付いた人間などが次々と「闇の柱」
 付近で行方不明となり、今では好き好んで近寄る者は誰も居ない。
 何でも地質学者の夫妻が12年前に迷い込み、旅していた間の記録や研究を纏めた本―「界列の日」が
 出版された事で異界の存在が世界中に知れ渡ったらしいのだが…。


 「異界…って、あの異界か?」
 真央は呟いた。
 他の8人も信じられないと言う表情をしている。
 「そうです。貴方達にとって一番大切なものを見つける為に、行くのです。」
 ファーブラの言葉が終わると共に、夜空から光が降り注ぐ。
 「…‥…ッ!?」
 驚愕に声を上げる暇も無く、真央達の姿は、閃光に包まれ、掻き消されていった…。
 後に残ったのは、貝の館と、その館主のみ。
 一部始終を見届け、"導く者"は静かな声で、しかし、歌うように言葉を綴った。
 ―――…迷い人達。幸運を祈ります…―――



 ファイナルファンタジー:アンリミテッド

 予言します。
 ファーブラに導かれ…9人の子供達は異界へ旅立つ。
 見知らぬ世界、離散、戸惑い、不安。
 草原で出会う1人の乙女。
 彼女は。

 天弓士―ぎんのカプリッチオ―

 次回もアンリミテッドな導きを…。





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