異界の夜へようこそ。
わたしはファーブラ。導く者。
荒野で。
地下鉄の中で。
迷い人達は少女と出会い、交わる。
その先に待つのは光か闇か。
あるいは――


    「邂逅〜その少女は〜」

「あたし隼(はやぶさ)!ハヤって呼んでねv」
その女の子は、チョビの猛攻から助け出されるなり、そうのたまった。
「そ、そう。私はリサよ。」
ちょっとひるんで言う、リサ。
人なつっこい、ていうか、遠慮がないっていうか・・・
でも、人見知りしないってのはお得よねっ
なぁーんて、あたし、アイ・ハヤカワは思ってみたり。
てか、余計な事考えてたら、出遅れた。
会話に入れてないし。
なんかすでに、ユウとかと仲良さそうにしてるし。
うぅーん、ムリヤリ割り込んでってもいいけど、
それだと第一印象悪いしな・・・
それやだな。
うぅ〜ん・・・
「ソチラさんは?」
うわ話振ってくれたよ、いい人だぁ!
「あたし、アイ・ハヤカワだよ〜」
「ふぅん、アイかぁ。いいなーアイ。
髪ピンクでかわいい――vv」
「うひゃあっ!」
ハヤはいきなり、あたしにぐぁばっ!と抱きついた。
しかも、なんか、腕しまってるんですけど――!
「く、くるし〜」
「あ、ごめんごめん」
ぱっ、とハヤがはなれる。
へへへって、頭かきながら照れ笑いする。
「ぶ〜」
「ごめんって」
あたしはあたしでわざとぶーたれてみたり。
この子すごいノリいーし。
おもしろい。
「ねぇねぇっ、何かゲームしよー!」
「牛タンゲームとか!ユウもやろっ。ホラ、リサも!」
「ルールがよくわからないんだけど・・・」
「ぼくが教えてあげるよ、リサ」
「みんなでぇー」
「せーのっ!」
『牛タンゲーム、イェーイ!!』



ここの天気は変わりやすい。
先ほどまで焼け付くような日差しが射していたというのに、
今はもう雨が降っている。
白い「雲」は少女と共に、雨をしのげる場所を探していた。
自分だけならば雨に濡れようが一向に構わない。
だが、少女はあまりにも薄着だ。
肩と腕がむきだしになった、ノースリーブのワンピース。
このままでは、まちがいなく風邪をひく。
現に、「雲」の手をつかんでいる少女の手は
かすかにふるえていた。
――おそらく少女も被害者なのだろう。伯爵の。混沌の。
一体どこで目をつけたか知らないが、オスカーも酷なことをする。
ふと「雲」は足を止めた。
少女が何かつぶやいたように聞こえたのだ。
わずかに腰をかがめ、少女の顔を覗き込む。
少女の瞳に自身が映りこんだ、その瞬間。
――「雲」の視界がゆらぎ、ゆがみ、そして――
――「雲」はあらざるモノをみた。


雲の隙間から光がのぞいた。
しかし雨は降り続く。
荒野を、雲を、そして「雲」を濡らす。
前髪とマスクで隠された容貌。
そこからにじみ出る憂いはなお深い。
だが次の瞬間「雲」は決然とした表情で、言った。
少女にむかって。
「君は、いてはいけない存在だね・・・」
魔剣が「雲」の意思に従って動く。
「君は混沌を助長させるモノだ」
それは死刑宣告に等しい。
振り上げられた「雲」の腕には力が満ち。
この荒野さえも打ち砕くかと、思われた―――





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