いつもと変わらぬ平穏な日の昼下がり、それが無くなろうとしていた・・・・。
ざわざわと騒ぐ街、そのひとつのある飲食店で食事をする
長身痩躯の黒いコートをはおった長髪の青年、
彼がこの物語の主人公の一人、通称「銀の海」。
何故か右目を髪で隠していて、見えている左目は冷たく、
鋭いが優しい光も同時に持っていた。
「ふう・・・。」
高いとも低いともとれないが、端正な声で彼は言った。
そしてレジへ向かった。
「580ギルです。」
満点の笑顔の店員は言った。
彼は、無言でその580ギルをそっと手渡し、店を出た。
そして間もなく、一人の青年が駆け寄ってきた。
褐色の肌にツンツン気味の髪型、
そしてやや筋肉質で白い服の、海とは対照的な男だった。
目はまるで純粋な少年のようだ。
背は175センチぐらいだろうか。
「おぉお〜い!!」
少し高めだが、やはりすっきりとした声でその青年は叫んだ。
「・・・なんだ、お前か・・・・・・・。」
海は言った。
「おいおい、相変わらず冷めてるなぁ。」
彼は通称、「金の雨」。
この物語のもう一人の主人公である。
「まぁよかろう・・・用件はなんだ?」
海は言った。少し古風な物言いだがあまり違和感はない。
「今日、調査隊が異界を調べに行くだろ?」
雨が言った。
「そういえば、そうであったな。」
海は答えた。
「今朝言っただろ?荷物はまとめてあんだろうな?」
雨は勢いをのせて言った。
「ああ。して、そういうお前こそどうなのだ?」
海は言った。
「よゆーよゆー♪」
雨は元気よく言った。
「なら良い。行くぞ。」
海はそう言うと同時に歩き出した。
「あ、待てよ!!」
雨は叫んだ。
そして、彼らは調査隊の船へ密航した。
科学技術の発達したこの世界では密航は困難ではあったが
雨の盗賊としての才能と海の運の良さが幸いしたのだろう、
あっさりと船に乗ることができた。
そして船は重々しいエンジン音と共に異界への道めがけて出港した。
ごとごとと鳴る荷物の中、海と雨は息を潜めていた・・・。
そして異界への道へ来た。
調査隊に紛れて2人も降りた。
すると、轟音と共に2体の化け物が飛び出てきた。
1体は赤い体をし、とてつもなく巨大で、恐ろしい風貌あった。
もう1体は赤い化け物と対照的に緑の体で紫の刃をした剣を持ち、
スマートな風貌だが、赤い怪物に劣らぬ巨体であった。
「に・・・逃げろー!!!!」
調査隊の隊長らしき人物が叫んだが時既に遅し、
赤い化け物の放った光弾により、吹き飛んでしまった。
しかし、運良くすこし狙いが外れたため、調査隊の半数が海へ投げ出された。
だが、半数は船などにぶつかり、
致命傷や後遺症が残るほどの怪我ではないが重傷を負った。
海と雨はまだ船の近くにいたため、光弾で吹き飛ぶ事は無かった。
「くそったれ!!あいつら一体何者なんだ!!?」
雨は叫んだ。
「・・・さぁな、俺にもわからぬ。しかし・・・・。」
海は三又の槍を取り出した。
「さぁ・・・・・動け。」
海はその槍に向かい、言った。すると、
槍にヒビが入り、銀色の光が槍を包んだ。
そして、その槍はまったく外見が変わり、白銀に輝く美しい姿になっていた。
「魔槍、解凍・・・・・・。」
海はつぶやいた。
「その手があったか!よぉし!俺も!!」
雨はやや巨大な斧を取り出した。
「動きなッ!」
雨が叫び、同じように斧にヒビが入り、金色の光に包まれた。
そして、海の「魔槍」と呼ばれる槍のように
黄金に輝く力強い姿に変わっていた。
「魔斧、解凍!」
2体の化け物はその光に気をとられたのか、
少しの間だがその動きを止めた。
海はその隙をついて自分の力量を最大限に発揮し、空に高く飛び上がった。
「桜華狂咲!!」
海は2体のうちの緑の化け物へ急降下し、「突く」と「斬る」の両方を生かした攻撃 をした。
巨体には効かないかと思ったが緑の化け物は腰をかがめ、こちらを睨みつけた。
「なら俺も!!」
雨は「魔斧」とよばれる斧を振りかざし、両足に力を入れた。
「妖星乱舞!!」
雨は赤い化け物へ向け、突進し、そして魔斧で数発斬った。
そしてすぐさま離れ、雨は魔斧を横に振った。
するとカマイタチのような三日月型の刃が飛んでいき、赤い化け物を切り刻んだ。
それは短い時間であった。
「どうだ!?」
海と雨は同時に言った。
すると赤い化け物は異界への道へ逃げ込み、
緑の化け物も追うようにそこへ入り込んだ。
「・・・逃げたのか?」
雨は言った。
「まだ油断は禁物だ。」
海が言ったそのとき、
「!?」
2人の下から地響きが鳴り、そこが崩れた。
「うわぁぁあっ!!」
2人はそこへ落ちていった。
そして、
「く・・・・・。」
さっきの衝撃で気を失ったのだろう、海は痛々しい声と共に上体を起こした。
「・・・!?」
そこには異界が広がっていた・・・・。

つづく




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