魔神器〜まそうとまふのなぞ〜


「異界・・・?」
海はその異様な光景を見て言った。
空は赤く、霧がたちこめて、大地はまるで爬虫類の肌のようにゴツゴツしている。
「雨、大丈夫か?」
海は雨を起こした。
「いって・・・・・・。」
やはり雨も痛々しい声で起き上がった。
「・・・なんだこりゃあ!!!?]
起き上がると同時に雨は驚いた。
「異界・・・・。」
海は言った。
「マジで!?」
雨は勢いよく言った。
「・・・!!」
上空から何か落ちてきた。
「危ない!!」
海は雨を掴み、その常人離れした脚力で一気にそれをかわした。
「何者だ!!?」
海は槍を持つと同時に叫んだ。
「クックック・・・すまんな・・・。てっきりモンスターかとね・・・。」
海よりも冷静な言葉遣いで、しかも紳士のような低めの声で男は答えた。
「てめぇ!何のつもりだ!姿を見せろ!!」
雨は怒鳴った。その男は霧で姿が見えなかった。
「・・・そうだな。姿を見せようか。」
男は霧から姿を現した。
長く伸びた金髪。ダークブルーでボロボロの肩掛け。
そして何よりもその男は両腕に淡い緑の腕輪をしていた。
ブーツにもその緑の箇所があった。
「さて・・・。自己紹介が遅れたな・・・。  私はウォール。武器は先ほど君達に投げつけたランスだ・・・。」
ウォールは言った。
「ランス?それを投げたと?」
海は言った。
「そう・・・。」
ウォールは言った。
「ランスなど、人の力で投げられるような代物ではない。
 ランスは騎槍とも言って、馬上で使うとてつもなく重く、巨大な槍だ。」
海は言った。ちなみに海は武器の知識はかなりのものだ。
「お前、もし仮にそのランスとやらを投げれたならどれだけ筋力すげえんだ?」
雨も言った。
「・・・この異界では科学などでは全く分からないことが99%をしめている。
 此処と君達の世界を一緒にしてくれては困る!」
ウォールは少し起こり気味な口調で言った。
「・・・確かに、世の中は不思議なものだ。
 むしろ科学で解明されないことのほうが多いかもしれぬ・・・。」
海は言った。
「・・・・・・で、アンタはどうやってこんなクソ重てぇモンを投げたんだい?」
雨は地面に刺さったランスを両腕で抜き、言った。
「これのおかげだよ。」
ウォールは右腕につけてある腕輪を見せた。
「それが何か?」
海は言った。
「これはここで見つけた物だ。
 これはつけた者の筋力を外見を変えずに、何倍にも膨れ上がらせる腕輪だ。」
ウォールは言った。
「へぇ〜、便利じゃん。」
雨は言った。
「まあな・・・。で、君達は何故ここに?」
ウォールは言った。
「そりゃあ自分を鍛えるためだよ。」
雨はすかさず言った。
「フッ・・・そうか・・・。」
ウォールは微笑みながら言った。
すると・・・。
「グゥゥ〜・・・・・・ッ・・・。」
「!!」
3人はその飢えた獣のような唸り声に振り返った。
「・・・ミドガルズオルムの幼生・・・。」
ウォールは言った。
「・・・ただの蛇のようだが?」
海は槍を構えながらも言った。
「つーかそれ以前にこんな蛇があんな唸り声するか?」
雨は言った。
「私にもわからん。だがここは異界の大蛇、ミドガルズオルムの棲家だ!!」
ウォールはランスでミドガルズオルムの幼生を薙ぎ払いながら言った。
「何!?」
海は言った。
「ミドガルズオルムは平均体長10メートル、だが大きければ30メートルを超す蛇 だ!」
ウォールは言った。
「げぇ〜!!そんなモン相手してられっか〜!!!」
雨はあたふたしながら言った。
「くっ・・・。数が多すぎる!!こうなれば・・・。魔槍!」
海は魔槍を解凍させた。
「!・・・それは・・・魔神器の一つ、魔槍ではないか!!」
ウォールは叫んだ。
「え?」
海は言った。
「俺達の魔斧や魔槍がそんなすごそうな武器なの!?」
雨は斧を見ながら言った。
「ああ。魔神器は数種類あってな・・・。
 その中でも召喚獣を召喚できる武器もあるという・・・。」
ウォールは言った。
「くっ!キリがないぞ!!というか雨!お前も手伝え!」
海は魔槍を振りながら言った。
「あ!すまん!よし・・・魔斧!!」
雨も魔斧を解凍した。
「桜華狂咲!」
「妖星乱舞!」
「ラフディバイト!」
3人は3方向に散り、それぞれの技を繰り出した。
特にウォールの攻撃、「ラフディバイト」は凄まじかった。
ランスが獣の牙の如く敵を引き裂いてゆく、
それは桜華狂咲や妖星乱舞にも劣らぬ威力であった。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
「ぜ〜、ぜ〜。」
「ふぅ・・・。」
3人も流石に疲れたようだが、その疲れと引き換えに敵は全て一掃した。
「・・・ミドガルズオルムの幼生は・・・、子供といえど・・危ない・・・。
なにせ人間はおろか・・・、自分よりも体の大きい獣まで・・食ってしまう・・。」
ウォールは疲れた口調で言った。
「・・・そっか・・・此処には危ねぇヤツがいるなぁ・・・。」
雨もやはり疲れた口調で言った。
「・・・すまんな・・・。お前たちも生きるために俺達を襲った。
 俺達も生きるためにお前たちをこの手で殺めた・・・。」
海は言った。少し悲しげな口調だ。
「・・・・確かに・・・此処では生きるために食うか食われるか・・・。
 ・・・海、 お前は優しいな・・・。」
ウォールは言った。
すると雨は話題を変えるかの如く言った。
「・・・なぁウォールさんよ、アンタがさっき言ってた「魔神器」って何だ?」
「・・・・魔神器とは、この異界の砂、「ソイル」や「ミスト」を用いて使われる武 器の事だ。」
ウォールは言った。
「ソイルねぇ〜・・・・。」
雨は言った。
「そのソイルを螺旋運動や直線運動で機械を動かす
 「ソイル機関」というものも此処に存在している。」
ウォールは言った。
「え?この異界にも人がいるのか?」
雨は言った。
「ああ。」
ウォールは言った。
「して、魔神器はどうやって変形をして、どうやってこの特殊な力を?」
海は言った。
「それは、ソイルの力だ。詳しい事は私にもわからん。」
ウォールは言った。
「そうか・・・。」
海は言った。
「しかし、召喚獣を呼ぶことのできる魔神器の種類は知っている。魔銃と魔剣、それ に魔爪だ。」
ウォールは言った。
「魔爪?それって海の兄さんの・・・。」
雨は言った。
「ああ・・・。」
海は言った。
「君の兄さんも持っているのか?」
ウォールは驚いたように言った。
「ああ・・・。」
海は言った。
「で、何故君達はその武器を持っている?何処で手に入れた?」
ウォールは言った。
「え〜、俺達が19のころだったな・・・。」
雨は言った。
「フム・・・。で?」
ウォールは言った。
「異界への道の近くでボートで釣りしててさ、
 そのときに意味不明な文字の刻まれた箱が流れてきてね。
 その箱を開けるとそれがあったんだよね。」
雨は言った。
「・・・その箱の中には6つ武器が入っていたか?」
ウォールは言った。
「いいや、槍と斧とメリケンサック。この3点セット。
 始めは変形するなんて夢にも思ってなくてさ、その武器を手に持った途端、変形したんだ。」
雨は言った。
「馬鹿な?あと3つは入っていた筈だ!」
ウォールは言った。
「いや・・・その箱を見つけた時、蓋に何かでこじ開けたような傷跡があった・・ ・。」
海は言った。
「何?・・・いや・・・。思い出した。
 魔銃と魔剣は既にある人物のもとへ渡っている。
 するとその箱に入っていたのは4つ・・・。」
ウォールは言った。
「ではあと一つは何処に・・・?」
海は言った。すると・・・。
「グウウウォ〜・・・・・。」
「しまった!ミドガルズオルムだ!!」
ウォールは叫んだ。
「なにぃ!?今度はガキじゃねぇのか!?」
雨は言った。
「成体だとしたらまずい!」
海も言った。
「逃げるぞ!!私について来い!」
ウォールは走った。
「グガァァ!!!!」
ミドガルズオルムは海たちを見つけたらしく、追いかけてきた。
「ぎゃあああああああ!!死ぬ〜!!!」
雨は叫びながら全速力で走った。
「あそこだ!飛び込め!!」
ウォールは人工で作られたように綺麗な洞窟を指差し、飛び込んだ。
「グウウウ・・・・・。」
ミドガルズオルムは諦めたのか、その場から姿を消した。
「・・・・・・助かった・・・・。」
「よかったぁ〜・・・・。」
「・・・・・・危なかった・・・。」
3人は九死に一生を得た。

つづく





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