前回までのあらすじ

洞窟で「黒き風」と出会った彼らは再びミドガルズオルムに遭遇するが、
魔神器のひとつ「魔銃」によってその難を逃れる。
そして、4人は街へと向かう・・・。


第4話 街〜ちかそしきコモディーン〜


街へと続く道を、彼らは歩き続けた。
「い・・・一体いつになったら着くんだよぉ〜!」
雨は今にも倒れそうな口調で風に言った。
「・・・もうかれこれ1時間は歩いておるな。」
海がそう言った直後に、
「・・・あそこだ。」
風がある場所に向かって指をさした。
そこには街とおぼしき場所があった。
「・・・これで着いたも同然だな・・・。」
ウォールは言った。
「ヒャッホ〜イ!まずは水だぁ〜!・・って俺たちギルしか持ってねぇよ!ここの通貨って何だ!?」
雨がウォールに言った。
「心配いらん。ここの通貨もギルだ。」
ウォールは微笑みながら言った。
「なら良かったぁ〜・・・。」
雨はホッとしたように言った。
そして、4人は街の着いた。
「・・・(この街の奴らってなんでみんな覆面かぶってんだ?)」
雨がウォールに耳打ちした。
「それはな、ここは街でありコモディーンの本拠地でもあるからだ。
 コモディーンの人々は皆、覆面を被っている。これも立派な民族衣装だぞ。」
ウォールは言った。
「ほう・・・覆面が民族衣装とは・・・。これはまた風情のある・・・。」
海は言った。
そして、ひとつの大きな建造物が目の前に広がった。
その玄関にはコモディーンの一員らしき女性がいた。
「・・・ん?あっ!ウォールじゃないか!」
女性が言った。
「やぁミィレス。」
ウォールが言った。どうやら女性の名は「ミィレス」のようだ。
「風までいるじゃないか!で、その2人は誰?」
ミィレスは海と雨に向かって言った。
「ああ・・・。紹介しよう。
 彼らは銀の海と金の雨。自分達を鍛えようと自ら異界に行った者達だ。」
ウォールは言った。
「で、異界に入ろうとすると2体の怪物が現れて
 俺と雨でなんとかしようと技をかけたが、あまり効果は無かった。
 まぁ体躯に差があり過ぎるから当然だな。」
海が言った。
「そん時に地震みたいなのが起こって落ちちゃったのさ。」
雨が言った。
「ふぅん・・・。きっとその地震は「混沌」だね。
 アンタ達も深く言えば「混沌」の犠牲者ってワケだ。
 ・・・まぁ立ち話もなんだ、中に入ろう。」
ミィレスは言った。
大きな扉が開き、彼らは中へ入ってゆく、その光景を、ある男が見ていた・・・。
「・・・ククク・・・。こりゃデカイ獲物だ・・・。」
その男は、やや小柄で、逆さ釣りになりながら不敵に笑った・・・。
「・・・ん・・・。ようミィレス、風!お、それにウォールか。」
髭をはやして、葉巻を銜えた男が奥のほうからやってきた。
「久しぶりだな・・・。ナーヴ・・・。」
ウォールは言った。
「はっはっは!相変わらずぶっきらぼうだなぁ!で、その2人は誰だ?」
ナーヴと呼ばれた男は笑いながら言った。
「ああ、黒服の方が「銀の海」。白服の方が「金の雨」だ・・・。彼らも「混沌」の犠牲者だ・・。」
ウォールは海と雨の方を見ながら言った。
「そうかそうか!よろしくな!海君、雨君!!」
ナーヴは2人に握手をしながら言った。
「あっ!おじさん、帰ってたんだ。って、ウォールまでいる〜!」
「風、お帰り。」
「クエェ〜。」
小さな子供が2人とチョコボが1羽、やはり奥のほうから出てきた。
「やぁ、アイ、ユウ、チョビ。」
ウォールは言った。
「ねぇウォールさん、あの人たちは誰?」
2人の子供の、男の子の方が言った。
「(ははは・・・これで聞かれるの何回目だろ・・・。)」
雨は心の中で言った。
「彼らは海と雨だ。君たちと同じく「混沌」の犠牲者だ。(フ・・・これで3度目だ。)」
ウォールは彼らに教えながら心の中でそう言った。
「クエ〜・・・。」
チョビと呼ばれたチョコボは海の方をじろじろと見ている。
「・・・どうした?」
海がそう言う前にチョビは海の後ろ髪をクチバシでつかみ、振り回した。
「うわぁぁぁ!!やめぬかっ!!」
海は振り回されながら叫んだ。
「・・・怖ぇ・・・。」
「・・・アイの髪以外にも気に入った物があったか・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・フン。」
「海〜!抵抗せずにじっとしていたらそのうち放すよ〜!」
「やれやれ・・・・。」
「・・・アタシじゃなくてよかった・・・。」
「海さ〜ん!大丈夫〜!?」
順に雨、ウォール、風、ミィレス、ナーヴ、アイ、ユウが言った。
「クエッ!」
チョビは勢いよく海を放した。
「うおっ!」
海は空中でバランスをとってなんとか無事に着地した。
すると、奥のほうからざわざわと聞こえてきた。
「おっとなんだぁ?」
雨は言った。
「フッ・・・。さっきの騒ぎでコモディーン達がやってきたな。」
ウォールは言った。
「一体何の騒ぎ?・・・あらウォール。」
奥から出てきたのは集団だったが
特に目立ったのはオレンジ色の服を着た女性と
頭にゴーグルのような機械をつけた青年
そして黒っぽいローブを纏い、顔を隠した小柄な人物であった。
「あ、はじめまして俺、金の雨って言います。で、こっちは銀の海。」
雨はそそくさと女性に言った。
「はじめまして、私はリサ。」
「どうも、僕はシドです。」
「・・・・・・・・。」
女性と青年は言った。
しかしローブの人物だけは何も言わなかった。
「・・・そっちの変なのは・・・誰?」
雨は言った。その直後に
「・・・そっちの変なのは・・・誰?」
とローブの人物は言った。
「オメーだよっっ!!!」
雨は起こり気味な口調で言った。
「まぁまぁ・・・。彼はものまね師ゴゴ。
 久しぶりだね、リサにシド。彼らも「混沌」の犠牲者だ。」
ウォールは言った。
「まぁ奥の「飛空艇シルヴィア」のドックで話そう。
 あそこなら空も見えるし、いろいろとそろってる。」
ナーヴが言った。
「飛空艇?ここにも飛空艇が存在するのか?」
海がナーヴに言った。
「そうとも!しかも外界より数段優れたヤツがな!」
ナーヴが自身満々で言った。
そして、彼らは飛空艇のドックへ行った。すると、またあの男がいた。
「・・・ヘッ、好都合だな。わざわざドックへ行くなんてよ・・・。」
その男はそう言うと姿勢を低くし、きわめて小さな足音で飛空艇ドックへ向かった。」
一方、海達はコモディーンの人々にいままでの経緯をすべて話した。
「っつーワケなんだ。なんとかして帰れないかねぇ・・・。」
雨は言った。
「あの地震のせいで、もうほとんど外界に行ける機械が壊れてしまったんだ。
 うううぅ!僕の愛しの・・・あっ!!」
シドが嘆きながら上を見上げると、あの男が飛び降りてきた。
ダンという音をたててすぐに起き上がり、
いかにも切れ味の鋭そうな日本刀をナーヴの首筋におしつけた。
「アンタらにゃあ恨みはねぇ。だがこっちも生きてく為でねぇ・・。」
その男は紫色が中心の服で、ターバンから見える目は毒々しい紫に輝いていた。
「このッ!」
ミィレス達がその男に攻撃しようとしたが
「おっと、俺もコイツは生かしておきたいんでねぇ・・・。
 でも、アンタらの行動次第でコイツの命、ここで奪ってもいいぜ・・・。」
男は冷たく言いはなった。
「ザケンなこの野郎!!」
雨が斧を勢いよく男に振り下ろしたが
「しゃらくせぇ!!」
と男は斧を雨の手を蹴り、シルヴィアの方へ飛ばした。
ガンッという鈍い金属音がなったその直後に
「なにすんだテメェ!!!」
という叫び声が聞こえた。
その声の主はシドだった。
その形相はまさに「鬼」だった。
「(・・・なんだこの変わりようは!?)」
海は驚いて声も出なかった。
無理も無い、穏やかな青年がいきなり凶暴になるのだから
「よくも俺のシルヴィアを傷つけやがったなぁ!!
 テメェは生かしておけねぇ!アルティメットハンマァー!!!」
シドは機械を変形させ、男に向かっていった。
「よせ!ナーヴが・・・!」
ミィレスは止めようとしたが、彼はもう完全に怒っていた。
「死にさらせやぁぁぁあ!!!」
凶暴な目つきがさらに凶暴になると同時に男にハンマーが振られた。
「チッ!」
男はナーヴを前に押し出すと勢いよくジャンプし、そのままクレーンにぶら下がった。
「なにぃ!?」
みんな驚いていた。すると男は
「無理もないだろうなぁ・・・。こんな事出来る人間なんてそんなにいないぜ。」
そう言うと男は右足をクレーンから離した。
右足の裏からはベタベタした粘液が糸を引いていた。
「俺の名はデスペイア。その名の通り相手に絶望を与える賞金稼ぎさ。」
デスペイアはそういうとニヤリと笑った。
「はぁっ!!」
リサは掛け声と共に氣現術をデスペイアに放った。
爆風が起こり、デスペイアも吹き飛んだように見えたが、
彼は少し早くクレーンから足を外し、地上に着地していた。
「・・・氣現術か・・・。なかなかのモンだな。だがそれで・・・俺は倒せない・・・・!」
デスペイアは日本刀をリサの首筋に軽くつきつけたと同時にある方向からナイフが飛んできた。
デスペイアはそれをかわし、
「誰だ!?」
と叫んだ。
「・・・・・・・・俺だ・・・。」
投げたのはゴゴであった。
「・・・へっ、テメェか・・・。ゴゴ・・・。」
デスペイアははき捨てるように言った。
「(・・・ゴゴと奴は知り合いか?)」
海はその会話でそう思った。
「ウォール・・・。奴がココに来たのは今日が始めてか?」
海は言った。
「・・・ああ。まさかずっと以前にゴゴと知り合っていたのか・・・?」
ウォールは言った。
「関係ねぇよ。アイツは俺がブッ倒す!!魔斧!!」
雨は斧を解凍させた。
「えっ!」
「何!?」
「魔斧ですって!?」
「・・・何?」
皆、驚いていたが特に反応が強かったのは
アイ、ユウ、リサ、風の4人だった。
「・・・この2人も、「魔神器」の持ち主だ。」
ウォールが言った。
「・・ヘッ・・・。まさかアイツらも魔神器の持ち主とはね・・・。」
デスペイアが言った。
「・・・「も」?お前、他に魔神器を持つヤツを知っているのか?」
風は言った。
「・・・知ってるもクソもねぇよ。ソイツは「ガウディウム四凱将」・・・白い雲だからな。
 ついでに、俺はガウディウムで暮らしてるよ・・・。」
デスペイアは言った。
「!!・・・そいつの所へ俺を連れて行け!!」
風は銃をデスペイアに突きつけ、叫んだ。
「おいおいおい・・・俺はアンタに用はないんだ。
 今はコモディーンのリーダー、ナーヴに用があるんでね。」
デスペイアは再びナーヴのほうへ視線を向けた。
「・・・教えろ。」
風は銃をデスペイアのこめかみへ押し付け、言った。
すると、上から銃声が聞こえ、床には直径約9ミリの穴が開いていた。
「何者だ!?姿を見せろ!!」
海が言った。
「退け、デスペイア。魔神器使いが3人も相手では、いくらお前でも無傷ではすまん。」
ウォールに似た低い声・・・。
その男は灰色の背広を着て、右手に拳銃を持っていた。
そして・・・男の顔はウォールにそっくりだった・・・。
「・・・兄さん?」
ウォールはそう呟いた。

続く





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