前回までのあらすじ

街についた海、雨、ウォール、そして風の4人は、成り行きで地下組織「コモディーン」の本拠地へ。
そこで出会ったコモディーンのメンバー達は、彼らを快く受け入れてくれた。
しかし、「デスペイア」と名乗る男が現れ、コモディーンのリーダー、「ナーヴ」を捕らえようとする。
デスペイアの話によると彼はガウディウムで雇われているらしく、風の仇「白い雲」を知っていた。
風がデスペイアに自分をガウディウムの城へ連れて行けと言うが、その時上から銃声が・・・・・・。
皆が上を見上げるとそこにはウォールそっくりの背広姿の男が、
外界製の拳銃、「グロック17」を右手に彼らを見下ろしていた・・・。

第5話 ゲイト〜はじまるぼうけん〜

「・・・兄さん?」
確かにウォールはそう呟いた。
少なくとも他の者より聴覚のいい海やウォールの周りにいた者はしっかりと聞き取っていた。
そして、背広の男は言った。
「・・・・・久しぶりだな・・・。」
「・・・ああ・・・。早速だが、単刀直入に聞きたい。兄さんもガウディウムの一員なのか?!」
ウォールは焦ったような口調で言った。
その少し後に、デスペイアは皮肉るように言い放った。
「・・・ヘッ・・・折角の感動の再会だ。邪魔しちゃ悪いな・・・。
 ゲイトさんよ、俺は一足先に帰らしてもらうぜ。」
背広の男はゲイトと呼ばれた。
ゲイトは少し笑って
「ああ、先に行っておいてくれ。私もすぐに行く。・・詳細は私から伯爵に話そう。」
と言った。
するとすかさず雨が言った。
「伯爵!?お前ら一体何モンだ!?」
ゲイトは薄ら笑いながら
「・・・ククク・・・。君は初対面だな・・・。まぁよい・・・。」
と言った。
それとほぼ同時にデスペイアはポケットから箱を取り出し、
その箱からは青い宝石のような物が出てきた。
「じゃあ、お先に失礼。」
デスペイアはそう言うと宝石を足元に落とし、踏み潰した。
パキン!という気持ちのいい音と同時に、
デスペイアの周りに青白い光のような物が出てきて、デスペイアは消え去った。
「な・・・消えただと!?」
海が不思議そうに言うと、ゲイトは答えるように言った。
「あれは「テレポストーン」という物だ。異界では結構よく見かける品でな・・・。
砕けば使用者が思った場所に行く事が出来る。」
「・・・便利じゃん・・・。」
雨は苦笑いしながらそう言った。
するとゲイトは雨水を下に流すパイプを伝って下に降りた。
革靴が地面にあたる音をしたすぐ後にアイが叫んだ。
「やいオッサン!なんでガウディウムなんかに協力すんのさっ!!」
「・・・・・・お穣ちゃん・・・。」
ゲイトは冷淡な口調で言った。
「・・・な・・・なによ・・!」
アイは少しまごつきながら言った。
するとゲイトはすこし笑いながら言った。
「口が悪いと彼氏が出来なくなるよ。ちなみに私は24歳だ。」
するとアイは頭にきたのか怒り出した。
「んだとこんにゃろー!!!!」
「あああ!やめなよお姉ちゃん!!」
怒るアイをユウが必死で止めようとする光景は、何故かリサでさえも見ていることしか出来なかった。
「・・・で、ウォールは何歳?」
「・・・・・私は22歳だ・・・。」
雨とウォールはこんな雑談までしていたが、その最中
「・・・さて・・・。確かに私はガウディウムに雇われている。
 理由は私自身も分からんがな・・・。」
ゲイトは冷たく笑い、続けてこう言った。
「理由がわからねぇだぁ!!?ふざけんなよこの野郎!」
雨は罵るようにゲイトに言いった。その直後に海が言った。
「・・・ゲイトとやら、何故そのガウディウムの統治者が伯爵なのだ?
 ガウディウムとは貴族なのか?」
「それは私にもわからない。ただ、タイラント伯爵の目標は知っている。」
ゲイトは冷たく笑いながら答えた。
「・・・世界中を支配・・・。とでも?」
海は眉をひそめながら言った。
「そのとおり、ガウディウムの規模と軍事力があれば異界はおろか、外界までも支配するのだ。」
ゲイトは冷たい笑みに更に冷たさを増して言った。
「ヘッ・・・。確かに暴君(タイラント)の名にふさわしいぜ。」
雨は皮肉るように言ったが、ゲイトはそれを聞いて
「・・・その表現はなかなか良いな・・。」
と言った。そして続いてこう言った。
「・・・今回は任務失敗だな・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
風はその言葉を聞くや否やその紅いショットガンをゲイトに向けた。
「ククク・・・。風君・・・。君のショットガンで私を撃ってみたまえ・・・。
 できるならね・・・・・・・・。」
ゲイトはあざ笑うように言った。
「・・・。」
風は黙ってショットガンの引き金を引いた。

ドゥン!!!

・・・雷のような銃声が鳴り響き、壁には穴が開いていた。
「・・・クックック・・・。その程度かな・・・?」
ゲイトは自分のいた位置とズレた位置にしゃがんでいて、そして皮肉るように笑った。
「嘘でしょお!?なんで弾がよけれるのぉ!?」
アイは叫んだ。
すると海は
「いや・・・。相手の視線やトリガーを引く指をよく見て、
 あとはかなりの運動神経があれば容易いこと・・・。」
というと続いて雨が言った。
「ああ・・・。あのゲイトって野郎、なかなかのやり手だぜ・・・。」
その会話を聞いたゲイトは
「この程度ならウォールにもできるぞ・・・。」
「・・・?」
ゲイトがそう言った直後、いままで難しい顔をしていたウォールが、ゲイトの首の物に気づいた。
「・・・ん?なんだあの青い物は?」
同時にナーヴ達も気づいたらしい。
ゲイトの右首筋には、やや小さくて湿っぽい謎の物体がついていた。
するとゲイトは何かに気づいたように言った。
「・・・今日のところは私が手を下すほどではないか・・・。・・・そうだろう?ピストよ・・。」
ゲイトはそう言うと上の壁の方を見上げた。
そこには、全身が青く、紳士的な顔つきの魔人のような男が立っていた。
「なっ・・・!」
海達やコモディーンはその男を見上げた。
「シャーッしゃっしゃっしゃっしゃ!!!!!」
ピストと呼ばれた男は高飛車に笑った。
「では、私は失礼する・・・。」
そう言うとゲイトはデスペイアと同じく、テレポストーンを使って消え去った。
「・・・お前も四凱将とやらかっ!?」
海が勢いよく叫ぶとピストは言った。
「そのとぉーり!!私は「ピスト・シャーズ11世」!!以後、お見知りおきを。」
「ケッ・・・。ふざけた奴だ・・・。」
雨はそう言った。
「だまれ小僧ッ!!!」
ピストはすばやくそう叫ぶと雨に向かって銃を発砲した。
しかし、普通の銃のようにあの雷のような銃声がない。
だが、雨の足元には濡れた穴が開いていた。
「・・・こんっの野郎〜!!まさか水鉄砲かよっ!!」
雨は叫んだ。
「フッフッフ・・・。水鉄砲と呼べるほど弱くはないがね・・・。」
ピストは見下すように言った。そして連続して
「君達の相手はデスペイアでもゲイトでも私でもない!貴様らの相手は・・・。ここだぁー!!!」
ピストはそう叫ぶと所々から水が噴き出し、滝ができた。
「みっ・・・みんな!!はやくシルヴィアへ!!」
シドは全員を飛空艇シルヴィアへ乗り込むよう言った。
「させん!!!!」
ピストが右腕を横に振るうと水の特徴を持ったロープのような物がシルヴィアの全ての出入り口を閉ざし、
外にはアイ、ユウ、風、リサにナーヴ、そして海と雨、ウォールが取り残された。
「くっ!遅かったか!!」
海は悔しがるように言った。
「みんなっ!!」
シドは飛空艇内で外に向かって叫んだ。
「シャーッしゃっしゃっしゃ!そこでくたばるがいいわ!!」
ピストはそう言い放つとやはりテレポストーンで消えた。
それと同時に滝の中からざばぁという音と共に何かが出てきた。
「・・・なにコイツ・・・?人魚・・?」
雨はそう言うとその人魚は口を開いた。
「わらわはソモサン・・・の妹♪笑いを愛する者じゃ・・・。」
海以上に古めかしい物言いでそのソモサンの妹は名乗った。

続く





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