前回までのあらすじ

ガウディウム四凱将「ピスト」やデスペイア、そしてウォールの実の兄、
ゲイトらの襲撃をうけ皆を助けようとしたリサは命を落としてしまう。
だが、その直後、謎の少女によって再び息を吹き返す。
一時は難を逃れたが、そのころガウディウムではゲイト達が再び攻撃をしようとしていた。
今度は、「風」の宿敵、「魔剣士」こと「白い雲」がメンバーに加わっている。
そして、ひどく人間を嫌っている謎の男、ベルフェゴールとは・・・・。

第7話 眠り〜しえんそしきリベレーター〜

「・・・とりあえずリベレーターに行った方がいいな・・・。」
「そうだな・・・。」
ウォールの唐突な問いかけに、ナーヴは答えた。
「・・・リベレーター?」
雨はその言葉に首をかしげた。
「・・・セカンドウォーズの際に、ある軍がレジスタンス支援用に鉄板と鉄パイプで作った、
 名に「解放者」という意味のある拳銃だ。・・・まぁ、無いよりマシ的な存在だったようだが・・・。」
海は雨の疑問に問いかけるように言った。
「ああ、外界ではな・・・。しかしここでは反ガウディウム組織のひとつだ。」
「とにかく、また奴ら、ここに来るかもしれないよ。」
ウォールが言った後、ミィレスが言った。
「そうですね。じゃあ、みなさん、シルヴィアに。」
「ああ・・・立てるっすか?」
シドがそう言ったあと、雨はリサに問いかけた。
「ええ・・・なんとか・・・。」
リサは息を切らしながら答えた。
「・・・休んだ方がいいと思う。」
ゴゴが唐突に言う。確かにその通りだ。
リサは体力を消耗している。
「さぁ、急ぎましょう。」
シドが言った後、飛空艇シルヴィアは重厚なエンジン音をたてて、リベレーターの本拠地へと飛び立った。
「・・・なぁウォール、さっきから聞きたかったんだけどさ・・・。
 俺達の持ってる武器って、そんなに特殊なのか?」
雨がコモディーンの人々が貸してくれたシルヴィアの一室で、海とウォールとの3人で会話をしていた。
「ああ、魔神器は全部で6つある。魔銃、魔剣、魔槍、魔斧、魔爪、魔拳の6つだ。
 魔神器にも種類がある。ソイルやミストと組み合わせて初めて本領発揮する、「召喚型」や
 君らの魔神器のような「攻撃型」や武器としても召喚用としても使える「万能型」だ。」
ウォールは出来るだけ詳しく、2人に話した。
「そうか・・・では話が変わるがウォールはコモディーンやリベレーターとやらとどんな関係なのだ?」
海が問う。
「私はコモディーンとリベレーターを繋ぐパイプのような役目だ。このようなパイプ役は他にも数名いる。」
ウォールが答えた。
「・・・ゲイトってさぁ、あんたの兄貴だろ?なんで実の弟のあんたにもあんな態度とったんだろうな・・?」
雨が禁煙パイポを咥えながら言った。
「・・・・わからん、しかし少なくとも兄さんはあんなに冷たくは無かった。・・・
あの時、兄さんの首筋に青いなにかがついていた。」
ウォールは少し下を向きながら言った。

・・・ガコン!

「!」
何かに接触したような音がした。
するとゴゴが扉越しに言った。
「リベレーター本拠地についたぞ。」
「あ!結構早いな。」
「・・・窓を見ていたつもりだったが、話に夢中になっていたようだ・・・。」
雨と海は言った。
「さぁ、降りようか・・。」
ウォールが静かに席を立ち、出口に向かった。
そして出口にきた直後
「風さまぁ〜!!」
という女の子の声が聞こえ、そのまま降りてきた風に飛びついた。
「な、なんだあの子!?」
雨が動揺しながら言う。
「ああ、あの子はルー・・・。「ルー・ルプス」。ウェアウルフの生き残りの少女だ。」
ウォールは雨に答えた。
「ふっ・・・よほど風の事が好きみたいだな・・。」
海はまるで我が子を見るような目でルーを見ていた。
「おいおい海ぃ〜、武器好きなのは別に構わねぇけどロリコンまではいただけねぇな〜。」
「ばっ・・・バカモノ!!俺は断じてそんな趣味はない!!」
雨が冗談で言った一言に、海は顔を赤くして言った。
「・・・ねぇ雨さん、「ろりこん」って何?」
近くにいたアイが雨に問いかけた。
「あっ・・・アイちゃん、それは知らなくて良い言葉だ・・!」
海が慌ててアイに言う。海は動揺しているのかギクシャクした言葉遣いだ。
「ふ〜ん・・・・・。」
アイは疑問があるという顔で海を見た。
「では、私とナーヴはリーダーにこれまでの状況を報告してくる。海、雨、君達も来てくれ。」
ウォールが雨と海に向かって言った。
「あ・・・ああ。」
「わかった。」
雨と海はそう言うとナーヴとウォールと共に、奥の部屋へ向かった。
そして、兵士に守られている重厚な扉をナーヴが開いた。
「・・・・よく来てくれた・・・。」
低い声で、男は言った。
その男は、青い髪に緑の瞳、外套を羽織っていた。
そして、右目には額までいく痛々しい傷が刻まれてあった。
「先ほど、シルヴィアで連絡したとおり、こっちの2人が「銀の海」と「金の雨」だ。」
ナーヴが冷静な口調で言った。
「始めまして、私が「銀の海」。そしてこちらが「金の雨」でございます。」
海が深く礼をした。
「私はマーツ。このリベレーターの創始者でもあり指導者だ。」
マーツは冷静な口調で言った。つづけて
「いろいろと疲れただろう。ビックス、ウェッジ、彼らを休憩所まで案内してくれ。」
「わかりました。」
「了解っす。」
マーツの傍らにいた2人の男が言った。
「ついてきてくれ。」
黒髪の総髪頭の男が言った。
海と雨は言うとおりにした。
「あとでコモディーンの皆もつれてくるよ。」
茶髪でピアスをした青年が続けて言った。
「ウェッジ、君はコモディーンの皆さんを連れてきてくれ。」
黒髪の男は茶髪の男、ウェッジに言った。
「OK!」
ウェッジは軽快な声で答えた後、飛空艇ドックへ行った。
そして歩く事3分・・・。
「さぁ、着いたゆっくり休んでくれ。」
ビックスは落ち着いた低い声で言った。
「感謝します。」
海はビックスに丁寧に礼をした。
そして休憩所のドアを開けた。
「あっ、お帰り〜。」
コモディーンの人々は先に着いたらしくアイが笑いながら言った。
「ああ、ただいま。」
海は微笑みながらアイに言った。
「・・・だからロリコンはよせって。」
雨がぼそりとつぶやいたが聴覚のいい海にはハッキリと聞こえた。
「違うと言っておる!!」
海は怒りながら言った。
「ワリーワリー冗談だって〜!」
雨が苦笑しながら言った。
「どうだった?」
ユウが2人に問いかけた。
「ん?マーツって人がリーダーらしいぜ。」
「それ知ってるよ〜。」
雨のトボけた返答にユウは笑いながら言った。
「あっ、みんな寝てるから静かにね。」
ユウが声をひそめて言った。
コモディーンの殆どが眠っている。
よほど疲れていたのだろう。
海は腕時計を見て言った。
「もうこんな時間か、俺達も風呂に入って眠るとするか。」
リベレーターの休憩所は、ホテルみたいな感じで、個室ごとに分かれている。
「やべっ!」
「どうした?」
「何か忘れ物〜?」
「どうしたの?」
雨がさっと言ったあと、海、アイ、ユウが聞いた。
「メシ食ってねぇ・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
雨の拍子の抜けた発言に皆、あきれ返った。
「・・・さて、寝るか。」
「じゃ、おやすみ〜。」
雨さん、おやすみなさい。」
3人はさっさと開いている部屋へと急いだ。
「ま、まってくれ〜!!」
雨は海のほうへ軽く走っていった。
そして、紅い月の下、彼らは深い眠りについた。

所変わって、ガウディウムは・・・
「・・・。」
ベルフェゴールは自分の部屋のテラスで黙って愛剣「十字剣フラガラッハ」を砥いでいる。
「・・・くっくっく・・・・。もうすぐだ。人間共を切り刻めるのは・・・・・・・。」
フラガラッハは鋭く研ぎ澄まされ、鈍い光をはなっていた。

がさ・・・。

「!誰だ!!」
ベルフェゴールは音のした所に向かってフラガラッハの刃を突きつけた。
「ああ!これはこれは、すみません、ベルフェゴール様。」
「・・・オスカーか・・・。悪かったな・・・。用件は?」
気配も無くベルフェゴールの部屋に入ってきたオスカーは、体をくねらせ、テレポストーンを差し出した。
「これでございます。」
オスカーはベルフェゴールに襲撃用のテレポストーンを2つ渡した。
「明日でございます。」
「わかっている。・・・人間が足手まといにならない事を祈るか・・・。」
ベルフェゴールはテレポストーンを受け取るとすぐにまたフラガラッハを砥ぎ始めた。
「では、私はこの辺で・・・。」
「ああ・・・。」
オスカーはベルフェゴールの部屋を出た。
「・・・・・・・。」
異界の夜の闇に、紅い月とフラガラッハが輝いていた。
まるでこれから本格的に始まる物語を祝うかのように・・・・・。

続く





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