フォスキアの場合・・・。

ここはミステリア・・・。
ミステリア人のすんでいる世界である・・・。
「今日が最後・・・か。」
一人の少年は独り言をブツクサ言っていた。
「・・・そろそろ・・・最後の挨拶にでも行こうかな・・・。」
するとその少年は立ち上がり、練習場の方へと向った。

「えいっ!やあっ!」
そこでは白い小さな少年が一生懸命剣の練習をしていた。
その少年はフォスキアの存在に気づいた。
「あっ!フォスキア!」
フォスキアはその声に反応した。
「やぁ。雲。相変わらず元気そうだね。」
「今日はどんなお話してくれるの?」
少年はわくわくしながらフォスキアの方へとやってきた。
「・・・今日はね、とっても大事なお話があるんだ。ここじゃ言い辛いからこっちへおいで。」
フォスキアは手招きをした。
「大事なお話ってなあに?」
少年は真剣な眼差しをしていた。
「実はね・・・ほら、この間大きな戦があっただろう。」
フォスキアも真剣だ。
「うん。あったよ。兄様も戦に行ってた。」
少年はますます興味を深めた。
「実は・・・その戦で僕の父親が命を落としたんだ・・・。戦死だってお医者様は言ってたけど・・・。
 僕はこの間も話した通り、ミステリア人とレイン人のハーフ。
 だから母さんのお父さん・・・つまり、僕のおじいさんに当たる人が僕を育てる事になったんだ・・・。
 全く、大人と言うものは勝手な生き物さ・・・。
 子供の言葉も聞き入れないで勝手に決めてしまうのだから。
 だから雲。今日でお別れだよ・・・。」
フォスキアは話し終わると立ち上がった。
すると雲がフォスキアの腕を掴んで放さない。
「嫌だ!フォスキア約束したでしょ!ずっと一緒に居てくれるって!
 一緒に一流の剣士を目指すって!なのに・・・。」
少年は泣きじゃくった。
「人にはそれぞれの事情がある。それを勝手に変えてはいかんぞ。」
ふと、森の茂みから赤い少年が現れた。
その少年は白い少年に顔が少し似ていた。
「あぁ。霧・・・。」
フォスキアはちょっと安心したような声を出した。
「でもっ兄様・・・。」少年は目に涙を溜めていた。
フォスキアは「きっとまた何処かで会えるよ。その時まで・・・。」と言うと何処かへ行ってしまった。

「ここがレインか・・・。」
フォスキアは今までに見た事も無い景色に釘付けだった。
「ほら。ここが今日から君がお世話になるおじいさんの家だぞ。」
おじいさんの知り合いと思われる青年はフォスキアをおじいさんの家まで案内した。
おじいさんの家はどちらかといえば古く、木で出来ていた。
ドアが開き、中から誇らしそうなおじいさんが顔を出す。
「・・・・・。」
フォスキアは何から話せば良いか、解らなくなった。
すると案内をした青年が、「最初は挨拶だろ。俺はこれで帰るからな。」と言って帰ってしまった。
「ん〜。」おじいさんはフォスキアの様子を見ている。
「え、えと・・・あの・・・。」
フォスキアは息を飲むと
「今日からお世話になるフォスキアです!宜しくお願いします!」と挨拶した。
するとおじいさんは「遠い所から良く来た。さぁ中にお入り。」
おじいさんは先程度は違って優しい顔付きになっていた。
ほっとしたフォスキアはおじいさんの後について中に入る。
「・・・・・。」
しかし、どうも話が繋がらない。
すると突然おじいさんが「どれ、その魔剣をわしに貸してごらん。」と言ってきたのだ。
これにはフォスキアは驚いた。
「これを一体どうするんですか?」
フォスキアは尋ねた。
「こっちの世界ではね、剣は上の者しか使ってはいけない決まりがあるんだ。
 お前さんのレベルが使っていいのは・・・。」
おじいさんはそこまで言うとフォスキアの手から魔剣を借りた。
「今日はもう遅いから早く寝なさい。」
フォスキアはそう言われると催眠術にでもかかったように眠ってしまった。

翌朝、フォスキアが起きるとおじいさんがニコニコと微笑んで座っていた。
「出来たぞ。これが魔矛だ。」
おじいさんはフォスキアに魔矛を渡した。
「有難うございます・・・。」とフォスキアは言い掛けたが
「と言いたいんですけど・・・何ですか?この重さは!」
フォスキアは持ち上げることが出来ない。
「どうやら少し鉛を入れすぎたようだ・・・。」
フォスキアは「入れ過ぎですよ!」と怒った。
「まぁ。待て。こう言うこともあろうかと・・・。」
おじいさんがベルを鳴らすと青年が姿を現した。
「こいつに教わりなさい。」と言った。
「全く、朝っぱらから・・・まぁいいか。俺はハルバド!お前は?」
ハルバドはフォスキアに目をやった。
「フォ・・・フォスキアです。」
「よし。フォスキア。今日からスパルタでやってやるからな!」
今日からハルバドの教育が始まった。




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