――――――異界の夜へ、ようこそ・・・・。
私はファーブラ、導くもの。
蝶が舞い踊る美しい世界の中をさ迷い歩く迷い人たち。
彼らは、そんな中である大きな館を見つけます。
その中に待ち受けているものとは―――。



『蝶〜うつくしきはなのけしん〜』


――――地下鉄が、音を立てずに静かに止まる。
「あ、止まった」
髪に黄色の鳥の羽を付けた少年――ユウが地下鉄のシートから立ち上がった。
「・・・・ん〜?なにぃー・・?」
少々寝ぼけているピンクの色の髪をした少女、アイが眼を擦りながらユウを見上げる。
「地下鉄が止まったんだよ。お姉ちゃん、早く行かなきゃリサも迷惑するよ」
そうユウが促すと、アイは自分が
オレンジの服を身にまとう女性――リサに寄りかかっていることに気付く。
「わっ・・・ごめん、リサ。私眠っちゃってて・・・」
慌ててアイが身体を退かし立ち上がると、リサも立ち上がる。
「いいのよ。ここのところ、まともに寝ていないんでしょう?」
と、優しい笑みをアイに返す。
と、その時、通路の床で眠っていた黄色の幼鳥、チョコボのチョビが目を覚ました。
「クエッ」と鳴きながら、ユウに擦り寄る。
その頭をユウは撫でながら、三人は地下鉄を降りた。
「けど、ユウは寝てないじゃないー」
三人はそんな話をしながら階段を上がる。
「あら、ユウだって寝ていたわよ?ねぇ、ユウ――」
階段を上がりきったところでリサの言葉が止まった。
何事かと思い、アイとユウもリサの後ろから身を乗り出しあたりを見回す。
「う・・・わぁ・・・・」
その景色は、あたり一面に花が咲き、
その周りを多くの蝶が舞い踊っているという、とても美しい光景だった。
「すごいね、こんな綺麗な景色みたことないや・・・」
ユウが花に近寄り指を出すと、一匹の蝶がその指に止まった。
アイの髪やチョビの鼻の上にも止まる。
リサは周りに危険がないかどうか氣を張り巡らせたが、危険なものは特になかった。
「ねぇ、ここで少し休憩しないー?ここなんだか気にいっちゃったーv」
ごろり、とその場に寝転がるアイ。
と、地下鉄へ続く入り口が閉ざされた。地下鉄が発車したのだ。
「・・・・そうね・・・危険な氣も無いみたいだし、戻ろうにも地下鉄が行ってしまったし・・・。
 少し休憩して、そのあとお父さん達を探しましょう」
リサが少し考えて、そう言った。
「わーいvvやったー!ユウ、探検しよ!」
「あ、待ってよお姉ちゃん!!」
走り出したアイに、ユウは慌ててその後を追いかける。
リサが少し戸惑った後、双子に聞こえるように声を張り上げ、
「あまり遠くにいっちゃ駄目よー!!」
と念をおさせた。
「わかってるー!!」
双子はそんなリサの気を知ってかしらずか、
後ろを振り返り手を振って笑顔でそう言い、走って言った。
「なんだか心配ね・・・。二人の後、少しついていって見ましょう、チョビちゃん」
「クエッ」
双子の保護者として、リサはチョビと共にゆっくり歩いて双子のあとを見守ることにした。
そのころ双子はリサたちが見えないところまで走ってくると、
その場で止まりまわりの景色を眺めた。
「ここらへん、なんか霧がかかってるね」
ユウがあたりを見回しながら不安そうに言った。
ユウの言葉どおり、さっきの光景よりもすこし視界が見えにくくなっている。
軽く霧のかかった野原を、双子は歩いていった。
「・・・・あれ?ユウ、何だと思う?あのおっきな館・・・」
ユウが眼をこらして、アイの指差した方向を見る。
すると、霧の間から微かに大きな館が見えた。
「・・・・なんだろう・・・・?誰か住んでるのかな・・・・?」
双子が少し近寄ると、その館はその大きな石の体をあらわにさせた。
「アイー?ユウー?どうしたのー?」
少しだけ遠くでリサの声が聞こえた。
「あ、リサ」
「これ、何だと思う?」
双子の元へ来たリサに二人はそう問いかけた。
「これは・・・館・・?・・・・なんだろう、この少しだけおぞましい氣・・」
リサは自分の両手で自分を抱くような仕草をする。
「ねぇ、もしかしたらお父さん達この中にいるかも!」
アイが興味津々に、そうリサ達に問いかけた。
「うん、行ってみようよお姉ちゃん!」
双子は自分の両親達が館の中にいるかもしれないという思いにかられ、
リサの引き止める声にも耳を貸さず館の中へ吸い込まれるように入っていってしまった。
「アイ!!ユウ!!」
リサが慌てて双子の後を追いかけるのを、チョビも必死で追いかけた。

その様子を、これまで双子たちが見ていた蝶とは違う、より鮮やかな、巨大な蝶が見ていた。
その蝶は、双子たちが館の中に入っていくのを見届けた後、
館の中に光るリンプンを撒き散らしながら入っていった―――――。


予言します。
嗚呼、迷い人たちはあやしげに聳え立つ館に入ってしまった。
館の主が彼らの目の前に現れます。
しかし、主は―――――。

『蒼御<そうおん>〜こんとんのぶんしんなるもの〜』

次回もアンリミテッドな導きを・・・・・。





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