異界の夕暮れヘ、ようこそ…
私はイヴ……見守る者…。
海と共に現れた『紅き影』
雨は彼をどう迎えるのでしょうか?

夕陽〜ネムリヘ〜

「…本当に良いのか?…ここで寝て…。」
雨の反応に、少し悲しそうな目で影が海に向かって聞いた。
宿までの道で、影は海を少しは信じれるようになったようだ。
「良いんです…雨とてそこまで心の狭い奴ではありませぬ。」
海が柔かく笑い、部屋のドアを閉めながら言った。
「オ、オイ!!どうゆう事だよ、海!!」
「あまり大声を出すな…。」
案の定大声で騒いだ雨を、海は影をチラリと見て言った。
そして海は、影を宿まで連れてきたいきさつを全て話した……。
「なんだ…だったらさっさと言ってくれりゃあ好かったのに…。」
「お前が勝手に騒ぎ立てたからだろうが…。」
そう言った雨に海が呆れて言った。

「えっと…紅き…影……だったよな?
俺は雨…金の雨ってんだ。」
海の話を聞き終わった雨が
月明かりの入る窓辺にの床に座って、外を見ている影に
『宜しく』と言わんばかりに手を差し出した。
影は差し出された手に、手を出そうとしたが、
雨の目を、また懐かしむような目で見、
「宜しく…。」
と言った。

雨はそれだけでも嬉しいらしく、
笑顔を浮かべて、雨は影の真正面に
海は影の側にある椅子に座った。

「なぁ、影、お前何処から来たんだ?」
二人が座ってから少しして、雨が影に聞いた。
なにか話そうと正面に座ったは良いが、
肝心の話題がなかったのが、正直な話だった。
影は外を見ていた視線を雨に向けた。
「ア…言いたくねぇなら別に…――
――ルッフェンダリア…。」
「!」
返事がすぐに帰ってこなかった事に不安を感じた雨が、
謝ろうとしたセリフを影のそのセリフで掻き消された。
「リュッフェン…ダリア?」
「ルッフェンダリアだ…
聞いた事はないだろう?」
反応した海に、影は少し笑った目で言った。

「ルッフェンダリア…幻影世界とも言われていた…。
素敵な世界でな…。夜になると『幻影虫』と言う虫が舞ったんだ…。
人々は皆笑い、誰も皆優しい人達ばかりだった…。
その世界は俺の誇りだよ…。」
今でも…
と、影は声に出さずに心で呟いた。

「ヘェ〜…何時か行ってみてぇな?海?」
「あぁ、何時か行って見たい物だな…?」
話を聞き終わった雨が海に振った。
その二人のセリフに、影は視線を落とした…。
「無理だ…。」
「エ?」
「!…何でだよ?」
目を落とした影のセリフに、雨も海もすぐ反応した。
「消滅したんだ…昔にな…。」
影派とても辛そうな表情で言った。
「消滅?……まさか…あなたも…。」
海のセリフに影が静かに首を縦に振った。
「……ごめん…そんな事だったなんて……。」
「別に良いよ、もう昔の事だし…。
それに、お前は本当に知らなかったんだもんな…
仕方ないさ…。」
影は苦笑しながら言った雨の頭を優しくなでた。

―…そうだ…アイツに似てるんだ……―
影は頭をなでている雨を見ながら、そう思った…。
影の目には、雨に似た…しかし何処か違う人物が
雨と重なるように映っていた。

「…なぁ、影……聞いて良いか?」
「!?…何だ?」
影は雨の声で我に返り、
雨の言葉に返事を返した。
「俺を見る時さぁ…
なんでそんな悲しそうな顔で見るんだ?
……会った時からずっと思ってたんだけどよぉ?」
影は雨の質問に少しためらってから、
こう言い出した…
「………似ているんだ…。」
予想しなかった影の答え方に、
雨は小さく驚きの声を上げた。
「似ているんだ…
俺の最強最高の戦友の一人にな…。」
雨の驚きの声に答えるように、
影が笑みを浮かべながら言った。

黄土の大地…それが影の戦友の一人の名だ。
雨と違うのは、口調が違うのと、
右目の下と右耳に金のピアスをしているという
だけだった…。

「ヘェ〜…じゃぁさぁ、海に似た奴もいたのか?」
「ア、雨!!」
笑いながら海を指差した雨に、海が大きく反応した。
「海は…。」
影は海を見て少し考えた。

「海は………俺に似てる…。」
「えっ?」
「はっ?」
予想外の影の答えに、二人は目を丸くした。
「何故だか分からない……
だけど、そんな気がする……。」
影は目を丸くした二人に言った。
その意味が分かったのは、
影を除いて海ただ一人だけだった…。

「今日は疲れた…そろそろ眠りたいのだが…?」
ほんの少しの沈黙が流れ、
影画2人の顔を見てから言った。
「…そうだな…そろそろ眠るか!?」
雨が影の言葉にそう返事を返すと、
海も『そうだな。』と言い、
三人はそれぞれに挨拶した……。

『おやすみなさい…。』





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